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第182話
「海老、美味しい〜!!」
近くの海鮮料亭に入った二人は伊勢海老のフルコースを頼んだ。
海老が食べたいと強請ってきた綾人に門倉は水族館で見た伊勢海老を思い出して、海老なら伊勢海老だとこの店を携帯で探して予約した。
豪快に鉄板にて伊勢海老の姿焼きを調理するシェフに綾人は大興奮だ。
前菜のスープやサラダから美味しいと絶賛の声を上げては始終ご機嫌な様子に門倉も嬉しくなった。
「デザートはイチゴにしてもらう?」
甘い笑顔で聞いてやると、綾人は頬を紅潮させて頷いた。
「やったぁ!嬉しい!!」
伊勢海老をまぐまぐ食べながらデザートにも期待する綾人に門倉は苺メインのものを食後に用意するようシェフへ伝えた。
ラストは伊勢海老のお茶漬けでだしもきいて、とても美味しく少食の綾人も門倉に手伝ってもらいながら完食した。
「う〜・・・。苦しい!これ、太りそう」
お腹を押さえて食べ過ぎたと呟く綾人に門倉が太れ、太れとデザートを運ばせる。
「わぁ〜!苺のパフェだぁ」
「苺が詰まってるねぇ・・・」
苺てんこ盛りで!とは言ったがグラスに敷き詰められた苺を前に門倉が失笑した。
食べる当の本人である綾人はすこぶる嬉しそうなのでいいかと、見守る。
お腹いっぱいと言ってたにも関わらず、デザートも平らげてご満悦の綾人の手を引き、二人は寮へと戻った。
自分の部屋へと帰ろうとする綾人を躊躇いがちに門倉が止めると、少し思案したあと踵を返して門倉の部屋へと来てくれた。
手は出さないという約束の元、一緒にお風呂に入り、同じベッドで寝たのだが二人揃って意識してしまい眠れずにいた。
触れてるからだと、背と背を向けて瞳を閉じると、互いの息遣いにすら神経が過敏に反応してしまい苦しい。
どうしようかと綾人が寝返りを打って門倉の背中へちょんっと、触れた。
「っ!!」
ビクッと、体を跳ねさせては全身を強張らせる門倉に綾人は驚いた。
門倉の緊張感が伝わってきて新鮮さを感じた。
少し、悪戯心も加わって門倉の背中へ今度は抱きつく様に耳を当てた。
「ちょっ、ちょっと、綾っ!!?」
らしくない赤い顔と上擦った声で振り返る門倉に綾人は目を輝かせてはクスクス笑った。
そのまま門倉の腹の上へのし掛かり妖艶な笑みを浮かべる。
薄明かりの中、妖しい天使が魅惑的に誘ってきているようで胸がドキドキする。
「・・・誘ってるの?」
そうであれと、願いながら口にした問に綾人はにぱっと笑って抱きついてきた。
「なんだか、変に緊張するから遊ぼう?双六ゲームしたい!」
・・・・・そっちのお誘いね
流石、小5とガックリ心を折られた門倉は上体を起こして部屋の電気を点けた。
時刻は夜中の2時過ぎだ。
大人の甘い時間を堪能してもおかしくないが、約束は約束と観念した門倉は何処かへ電話をかけた。
こんな深夜に何処へと疑問に思っていたら、どうやら実家へ電話をしてようだ。そして、綾人ご所望の双六ゲームを持って来いと命じる。
電話はすぐに切られ、ベッドを出ると門倉はコーヒーを淹れ始めた。
「綾もおいで。今夜は寝かさないからね」
とことん遊んでやると不敵な笑みを浮かべる門倉に綾人は上等だとベッドの中から飛び出した。
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