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第185話
体育祭当日、秋になりながらもまだ暑いことから生徒達は半袖半パンだった。
そんな中、綾人だけは長袖長ズボンで暑いと嘆いていた。
これにはちゃんと訳があって、悲しきことに半袖半パンを着ると絶対と言っていいほど、周りの人間達からセクハラを毎度受けるのだ。
その事を踏まえ、綾人は真夏であっても極力肌は見せないように心がけていた。
今年は門倉がいるが、その門倉にも長袖長ズボンを着用するようにとキツく言われていた。
立春高校は大きく紅組・白組と分けられる。
同じクラスなので綾人とざくろは同じ白組だった。
対する門倉と九流は紅組で敵同士となる。
「門倉先輩と賭けしたんだ〜!白組が勝ったら何でも買ってくれるって!」
「え!?門倉先輩と賭け?綾が負けたらどうするの?」
「言うこと何でも一個聞く事になってる!っていうか、負けないもん。えへへ〜!何買って貰おう〜」
無邪気に喜ぶ綾人にざくろは門倉相手に恐ろしい賭けをするなと汗を流した。
あの門倉の言うことを一個聞かなければならないハイリスクを綾人は分かっていないのだろう。負けたら絶対泣きを見る姿が目に浮かんだ。
体育祭開始の花火が打ち上がり、生徒達は全員グランドに整列した。
観客席はテントが張られ保護者達が優雅に我が子の応援に駆けつけていた。
親戚がいない綾人は少し羨ましい気持ちになったが、賑やかなこの空気が楽しくて始終笑顔だ。
そこへ、親衛隊がわらわら綾人を取り囲む。
「白木、障害物競走頑張れよ!俺らも全力でサポートするから」
「ちょっとした事故は起こるかもしれないけど、これもまた競技だしね!」
「そうそう!楽しもうな!!」
意味深な言葉を言い聞かせるように告げてくるクラスメイトに首を傾げながら綾人は小さく頷いた。
前にざくろが言っていた罰ゲームのことを言っているのだろうかと不安に思ったが、そこまで運動神経が悪いわけでもない。
だから、ビリはないだろうと踏んだ綾人は気にもかけなかった。
整列しながら前を向くと、グランドの前に建てられた台に生徒会長の挨拶として門倉が黒の長ランに赤のハチマキを巻いて上がった。
いつもの爽やかな王子様はとても凛々しく頼もしい姿での登場で門倉ファンがざわめき立つ。
次いで、同じ格好で副会長の九流が台の上へ立つとこれまた歓声が沸き起こった。
元々男らしく端正な顔付きの九流なだけに、門倉より長ランが板に付いている。
「九流先輩、かっこいい・・・」
素直な感想を述べるざくろに綾人は可愛いなと、友人を眺めた。
自分も門倉を褒めたかったが、気恥ずかしくてとても口に出来そうにない。
そんな想いを胸に綾人は挨拶をする門倉を食い入るように見つめた。
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