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第188話

午後の部が始まり、門倉率いる生徒会メンバーは再び長ランを着て赤のハチマキを額に巻き、グランドへと整列した。 圧巻するほどの迫力と今年の生徒会長と副会長の美麗に生徒だけでなく教師も保護者も釘付けとなった。 二人一組となって華麗な武道の組手の型を取るのがこの種目なのだが、門倉の相手はもちろん九流だ。 太鼓の音に合わせて型を取っていくなか、門倉は九流へ先ほど得た障害物競走の情報を伝えた。 「え!?」 驚きに体を強張らせる九流に門倉が注意する。 「ちゃんと、型とれよ!」 「つーか、ざくろも出るのか!?」 「出るらしいぞ。さっきコース内容確認したら、相変わらず悲惨だった」 この障害物競走はとても厄介な出し物で、一年の時に門倉と九流の二人も先輩達からの制裁として経験していた。 別名『双六障害物競走』といって、障害物を避けて通った後のゴール前では双六ゲームが行われる。サイコロを振って、その数だけ前に進んでは罰ゲーム並みの悲惨な展開をその身に受けなければいけないシステムになっているのだ。 つまり、リアル双六ゲーム。 コマは競走者達で殆どが悪ふざけの内容なことを門倉と九流は知っていた。 「辞退はさせられねーのかよ!?」 「無理でしょ。本人達すこぶるヤル気だし」 「つーか、なんでもっと早くに知らせねーんだよ!」 「うわっ!あぶね!!」 九流の怒りが拳に表れて、門倉の頬を掠めとる。恋人の危機にイライラしているのだろうが、それは門倉も同じで八つ当たりをされた事に更に苛立ちが増した。 「私情挟むなよっ!」 「っ!」 ビシッと生拳を胸に当てられ、九流が痛みに眉間に皺を寄せた。 しかし、その一発が互いの闘争心に火をつけて型を止めると太鼓の音を無視して両者睨み合った。 「てめぇ、本気で入れたな」 「先に拳振るったのは猛だろ?」 ピリピリする空気間の中、互いが型を取る。 太鼓を叩いていた教師も二人の雰囲気が異様で手を止めて目を見張った。 周りの生徒会メンバーは太鼓が鳴り止み、何事かと中央の二人を見ては青ざめる。 仲が良いと思えば何かと喧嘩してはそれが派手で頭を悩まされるメンバーはまさかの事態に慌てだした。 「来いよ。昨日のイカサマの借り、ここで返してやる!」 「たかがゲーム如きで熱くなって、ガキなんだよ、お前は!」 互いを罵り合い、門倉から足を上げての中段蹴りを決めに入った。ヒラリとそれを避けては九流は回し蹴りを決める。 それを腕で受け止め、体制を整えると門倉はすかさず拳を顔面へと振り下ろすのだが、寸前にて躱された。 「その澄ました顔面ぶん殴ってやらぁ!」 「あぁ⁉︎そりゃ、こっちのセリフだっ!!」 組手などそっちのけで互いに胸倉を掴みあった時、振り上げた拳を他の生徒会メンバーが飛びつくように止めに入った。 教師と保護者も揃うこんな公の場でこの学園の生徒会長と副会長がマジ喧嘩などあってはならぬ事で、生徒会のメンバーは必死になった。 「か、会長っ!ここ、グランド!!保護者もいます!!!」 「九流さんも落ち着いて!ペナルティー科せられますよ!!」 大声を上げる役員達に耳を貸すことがなかった二人ではあったのだが、大音量でいきなり放送を流すチャイムが鳴り響いた。 ー ピンポンパンポーン ー 何事だと流石の門倉達も動きを止めた時、この学園の名物でもある若く美しい容姿を持つ理事長がマイク片手にグランド前の壇上へと上がる。 「今年のパフォーマンスはとても迫力がありますね。皆の心をハラハラさせてそれはそれで素晴らしい!だが、そんな楽しい二人はとても人気者らしく、君達のベールに包んで隠された熱い想いを披露するのも如何なものかな?」 優雅な物腰と優美な笑顔が笑わない瞳で二人を見据えた。 一癖も二癖もある立春高校の理事長、新藤はかなりやり手の男で上流社会手ではかなりの高評価を得ている男だ。 捉え所のない性格で門倉も苦手意識が少しあった。 そんな理事長の怒りを買ったことをバツの悪そうな顔で二人が受け入れると、新藤はボイスレコーダーを取り出した。 「じゃあ、まずは副会長の九流から・・・」

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