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第190話
「あ、アレって白木 綾人様って言ってたし綾へ向けてのラブレターだよね?」
自分の隣にて真っ赤な顔で口元を押さえる綾人にざくろが聞く。
綾人はざくろへ視線を向けると、あんなラブレター貰ったことないと首を小さく横へと振った。
「新藤さん、どこからあんなの収集してくるんだろう」
昔馴染みの知り合いである新藤を本当に凄い人だと、ざくろが呟く中、綾人は門倉の書いたと思われるラブレターに頭の中が真っ白だった。
あんな風に想ってくれていたなんてと感激した。
その反面、恥ずかしくて暫くは門倉の顔を見れそうもなかった。
いつも澄ましては余裕たっぷりのあの男があんな手紙を書くなんて、どういった心境だったのかは知らないがこれで残りの門倉との恋人期間を前向きに続けられそうだと嬉しくて仕方がない。
自分だけの完全な片想いではない事が分かった綾人は胸を弾ませて次に出る障害物競争に拳を握りしめた。
「ざくろ!障害物競争、頑張ろうね!!」
にっこり笑ってヤル気に漲る綾人を前にざくろが大きく頷いた。
障害物競争は一位にはご褒美を、最下位には罰ゲームを与えられるらしく、出場者は全員一斉にスタートを切る。
出場者人数は全員で十人。多いような少ないような微妙な人数だが、綾人とざくろに艶かしい視線がとりあえず絡みついてきていたのは確実だった。
グランドをぐるりと一周回ってゴールを切るのだが、それまでに沢山の罠が張られていた。
ゴール前には大きなダンボールで作られたサイコロが用意されていて、出た目に止まったらそこへ記載されたミッションをこなさなければならない。
「なんか、ちょっと・・・」
障害物というより、内容が変に濃い競技に綾人もざくろも眉を寄せた。が、文句を唱える暇もなく、開始の合図がグランドへ響き渡った。
二人は一瞬、出遅れるものの持ち前の足の速さが功をなし、二人揃って一番前に走り出た。
ほんの少し前を進む綾人は縄網を潜って抜け出そうとした時、真上からバシャンっと冷たい何かを思い切り被る。
「ギャアッ!!!」
ビックリして身を竦め、顔を上げると網を出たところで上へ吊るされたバケツが逆さに向くよう罠が仕掛けられていた。
中身はただの水ではなくて、ヌルヌルのローションに綾人は気持ちが悪いと足を止めた。
その横をお先にとざくろが進み、跳び箱を飛び越え平均台の上をバランスよく通っていたら左右からパシパシパシッと大量の生卵が投げつけられた。
「うわっ!いたっ!!冷たっ!!!」
綾人同様割れた卵の液によりベタベタになったざくろは更に平均台から落っこちた。途端、罠が発動して顔面目掛けて生クリームたっぷりのパイが直撃する。
「ぶっ!!」
マットの上へバタンっと、倒れては酷過ぎると打ち震えるざくろはゆっくり体を起こしてパイ皿を顔から取り払った。
ポケットへ入れていたハンカチで顔を拭うと、ローションのせいで跳び箱やら平均台が滑って怖いと前に進めない綾人が目に飛び込んできた。
そんな綾人をあわよくば助けるフリして抱き締めようとする輩が周りを固めていて、それもまた嫌だと綾人は身動きが取れずにいた。
そんな事をしていたら、ざくろ同様生卵地獄とパイ皿地獄に苛まれ、綾人の顔面へバシバシバシッと直撃した。
「うっ!わぁ!!ギャンっ!!!」
バタンッと自分と同じようにマットの上へ沈む綾人に今度はわざと狙った男達が綾人の上へとダイブした。
何人ものの男達に下敷きにされる綾人は常に悲鳴を上げ続ける。
「ちょ!誰!?どこ触ってんのっ!!?」
ズボンを脱がせようとしたり、体操服を捲り上げてくる輩の手を払っては泣きながら喚く綾人にざくろはごめん!っと心の中で謝りながら先を急いだ。
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