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第191話

「こ、これイジメじゃんっ!酷すぎるっ!!」 ヒーヒー言いながら男達の下から這い出た綾人はずり落ちるズボンを引き上げながら前を進む。 落とし穴やら粉まみれのゾーンに、泥水をぶっかけられるなか、必死にゴールを目指した。 前を走るざくろも、もちろん悲惨な姿になっていたが、とりあえず足を止めても上下左右から攻撃が起こる事により、前へ前へとゴールを目指していた。 「綾、大丈夫?」 最後の正念場である双六ゾーンへと辿り着いた綾人に青い顔をして大きなサイコロを抱えるざくろが聞いた。 「全ッ然、大丈夫くない!お風呂はいって休みたい!!」 「同感だね」 ゼイゼイ息を切らせる二人は双六の目に書かれているミッションに絶句した。 10マスあるそのコーナーは例え6の目を出しても一回はミッションを受けなければならない。 また、そのマスに書かれたミッションが酷過ぎた。 好きな人の名前を叫べだの秘密を暴露しろだのとプラバシーの侵害もいいとこで、綾人もざくろもげんなりした。 しかし、そんな内容は序の口で、もっと酷い内容も記載されている。それらは全裸で逆立ちだの、裸で阿波踊りだのと下卑た命令も記されていた。 悲惨な内容に二人共なかなかサイコロを振ることが出来ずにいたら、後ろから来た男達にサイコロを奪われてしまう。 男はなんと、四つん這いになり誰かの足を舐めろというミッションに綾人を指名した。 「ぅえぇえ!!?やだよ!ヤダヤダヤダヤダッ!!!」 拒否して全力で抵抗するものの、周りの生徒に押さえつけられて靴を脱がされると、綾人はべろりと足を舐め上げられた。 気持ち悪さに青ざめてはもう嫌だと涙を浮かべる。 そんな時、意を決してざくろがサイコロを振った。 出た目は5で、内容は『上半身もしくは下半身裸になること』だった。 それならばと迷うことなくざくろは上のベタベタの体操着を脱ぎ捨てた。 白い肌が泥などで汚れてはいたが、周りはざくろの肌に熱視線を注いで、ゴクリの喉を鳴らす。 『ボケッとせずにサッサッと次々にサイコロ振れっ!!!』 それを遠くの場所にて見ていた九流がマイクの音量をMAXにしては怒号を放った。 ざくろの肌に魅入っていた競技者達はその声に我に返って次々とサイコロを振った。 順番が回ってきたざくろもサイコロを振ると運がいい事に6が出て双六ゲートから解放された。 そして、そのまま一位にてゴールを切る。 それを見た綾人も覚悟を決めてサイコロを振る。 悲しきことに賽の目は1で心が折れた。 しかも内容を確認したら『赤ちゃん言葉を使う』だった。 全校生徒の視線が突き刺さるなか、綾人は赤い顔で俯いて呟いた。 「・・・・ば、ばぶー」 真っ赤な顔をした天使を見た生徒達は可愛いと大笑いし、恥ずかしさに両目を瞑ってサイコロを綾人は再び振った。

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