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第194話

「ざくろは今日はパン屋さん?」 「うん」 本日の授業を終えて帰り支度をするなか、綾人が聞くとざくろは大きく頷いた。 今日は金曜日だから少し遅くまでバイトに入るらしい。 綾人は門倉との約束の曜日の為、寮へ戻って宿題でも終えたら門倉の部屋へ行こうかとぼんやり考えていた。 「生徒会も12月までは忙しくなさそうだし、門倉先輩もゆっくりできるね」 「うん。今日から当分生徒会業務はないって喜んでた」 にこにこ笑いながら一緒にざくろと途中まで下校すると綾人は手を振って一人で寮へ帰宅した。 私服に着替えると鞄の中から宿題のプリントを取り出す。 「あ!」 プリントと一緒にヒラリと今朝、担任から渡された封筒が机の上へ落ちた。 椅子に座ると、溜息を吐きながら何気なく封筒の封を開く。いつもなら、中身など見る事もなくゴミ箱行きなのだが、単なる気まぐれだ。 しかし、その中身を見た途端、綾人は驚きに呼吸が止まった。 「っ!!」 中には3枚の写真が入っていた。 一枚目は寮からの外出時、はやみ心療内科へ受診しているとき、速水と和気あいあいと会話をしている自分だった。 一緒に写っている速水の顔がナイフか何かでズタズタに切り裂かれていた。 二枚目は綾人の従兄弟の宏樹が無残な姿で縛り上げられた写真だった。 顔は青紫に腫れ上がり、足と腕があり得ない方向に折れ曲がって全裸でごみ捨て場に倒れ込んでいた。 三枚目は昨日の体育祭での自分の笑った写真だ。 そこに赤いマジックペンで大きくメッセージが記載されていた。 『ぼくの天使、必ず迎えに行く』 走り書きされたその文字に綾人は血の気が引いた。そして、脳裏に駆け巡ったのは昨日の体育祭でのあの簡易風呂での出来事だった。 あの荒々しくも扉をぶち壊して乗り込んでこようとしたあの謎の人物がこの手紙を寄越した犯人なのではと冷や汗を流した。

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