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第203話
今日は楽しい!
門倉先輩は優しいし、美味しいものも欲しいものも沢山買ってもらって幸せ過ぎた。
るんるん気分で綾人は結局、夕食を外で済ませて食後のデザートのイチゴのケーキを食べていた。
門倉は私用の電話で少し席を外している。
ケーキを満喫しながら今日買ってもらったゲームと筆箱、そして何度も断ったがプレゼントすると言う門倉に買って貰った服を眺めた。
物がというより、門倉とのスムーズなこのデートと気持ちが何より嬉しかった。
そして、今日一番の収穫は・・・
鞄を引き寄せ、手帳に挟んだ一枚の写真を手に取った。
それは今日、門倉にお願いして撮った門倉と綾人のツーショットの写真だった。
携帯電話のカメラで撮ったのだが、門倉の目を盗んで急いで現像した。
二人の写真が無かっただけに喜びが半端ない。
幸せ気分に浸り、写真を眺めていたら、ウエイトレスの女の子が近寄ってきて綾人へ白い封筒を差し出した。
「白木 綾人様ですか?こちら、男性客の方があなたへ渡すようにと言付かりました」
「え?僕に??」
どの人ですかと、店内へ視線を巡らせるとウエイトレスはその客はもう帰ったと言った。
少し不審に思ったが、何気なく封筒を開けると中から3枚の写真が掌から落ちた。
「これ・・・・っ・・!」
それは今日、門倉とデートしていた自分で綾人は顔面蒼白になる。
寮を二人で出た所と、ゲームを買って貰って喜ぶ自分。
そして、手を繋いで門倉と街を歩く3枚の写真は全て門倉の顔を刃物で切り刻まれていた。
そして、3枚目の写真に赤ペンで大きく文字が記載されていた。
『穢れた天使、救ってあげる』と・・・
こんな写真を送ってくるだけでもゾッとするのに、意味の分からない文章に綾人の体は震えた。
席を立って、これを持ってきたウエイトレスの元へ駆け寄り、この封筒を渡した人間の事を聞いてみる。
すると、彼女は笑顔でこの気味悪い写真を寄越した犯人の事を頬を赤らめて熱弁した。
歳は25歳前後で長い黒髪を後ろで一つに束ねたイケメンだと言った。
背も高く、清潔感溢れる優しげな笑顔の持ち主でとても素敵だったと言う。
名前は名乗らなかったが、綾人の知り合いだと言っていたようだ。
二十五歳前後の男でそんな好青年、綾人には皆目検討も付かなかった。
それに、内容が内容だ。気持ち悪くて仕方がない。しかし、これで昨日体育祭の時の写真を送ってきた人物と一致した。男は学校外の人間という事が知れた。
今日を最後にあまり外出はしないでおこうと気を引き締める。
門倉が戻ってきたら、店もすぐに出て寮へ戻ろうと思ったとき、門倉の帰りがやたら遅いことに綾人は気を焦らせた。
席に戻り、鞄から携帯電話を取り出して電話を掛けるが、コール音は鳴るのに電話で出ない。
もしかしてと店の外へ足を向けたとき、カランっと扉に付けられた上品な鈴を鳴らして門倉が店の中へと戻ってきた。
「先輩!!」
安心したと脱力する綾人に門倉が首を傾げる。
「何かあった?」
柔らかく微笑む門倉に我にかえると、綾人は首を横へ振って笑顔を向け、言い訳を口にした。
「帰ってくるの遅いから、先に帰ったのかって不安になっただけです」
「まさか!そんなことする訳ないじゃん」
馬鹿だなと、笑う門倉は席に座って残りのコーヒーを飲んだ。
どこからどう見ても無傷で害を受けた様子のない門倉に綾人は心底、安堵した。
「先輩、もう帰りましょう?」
これ以上、外に居たくないと上目遣いで懇願すると門倉は優しく微笑んで頷いた。
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