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第210話
・・・・・あいつ、また壊れたの?
白く高い天井を見上げ、目を覚ました綾人は体を起き上がらせた。
いつも自分が眼を覚ます時は病院だ。
ベッドを抜け出して裸足のままペタペタ歩く。
永い眠りから覚めた気分で鏡に映る自分の姿を見た。
「あ、成長してる・・・」
以前見た姿より大人びた自分の姿に驚いた。
「相変わらず、変態受けしそうな顔」
馬鹿にするように笑って鏡を指先で撫でると、綾人は近くに置かれていた自分の持ち物と思える鞄を手繰り寄せた。
鞄を開けて荷物を探る。
今の自分を知るため、鞄の中を荒らしていった。
「・・・・・俺、今何歳?」
首を傾げて、ブツブツ唱えながら鞄のさらに奥を探していくと、簡素な手帳を発見した。
ペラペラ捲ると、チラホラスケジュールが書き込まれている。
目立つのが、毎週金曜から日曜にかけて線が引かれ「門倉先輩」と書かれていたことだった。
あと、「ざくろ」とも多く書き記されていて首を傾げた。
「ザクロ?好きだったのかな?」
赤い果実を連想しながら不思議だなと呟いたとき、一枚の写真が落ちた。
「・・・・・誰、こいつ?」
自分の知らない男が自分の隣に映った写真に目を見張る。
あまり写真が好きではないくせに、こんな嬉しそうな顔で写っている己に目を瞬かせた。
「この男に懐いてたわけ?」
王子様のように品性溢れる顔立ちをし、柔らかな笑顔を浮かべる男に綾人は溜息を吐いた。
「男に懐くとかキモッ・・・」
心底嫌そうに吐き捨てると、綾人は写真を丸めてゴミ箱へと投げ捨てた。
「起きてるか分かりませんが、とりあえず綾人君の所へ行きましょう。ただ、歯に衣を付けない手厳しい人格に今はなっていることだけは了承してくださいね」
長い廊下を歩きながら繰り返し、念押ししてくる速水に一同頷く。
これから会う綾人が自分達の知らない人格になっていることに緊張する反面、まだ信用できずにいた。
部屋の前へ着くと、速水も緊張しているのか扉を開く手が止まった。
暫くして、気持ちを整えた速水は小さく深呼吸したのち、扉をゆっくりと押し開いていった。
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