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第215話
「綾ちゃん、ゲームそろそろ止めたら?」
風呂から上がって、綾人は昨日門倉がプレゼントしたゲーム機を見つけるや、夢中で遊びだした。
あまりゲームに興味がなさそうだった綾人だが、中二にもなると趣向が変わりゲームに白熱していた。
昼から夕方の今の今まで、長時間没頭する事から、何度となく止めるように呼びかけるが、最初こそ返事は返せど、今では無視だ。
「綾ちゃん!」
少し声を張って注意すると、チラリと視線を向けてきた。
「少し休憩挟みなさい」
それだけ言い残すと門倉は自分も風呂に入るかと脱衣所へ向かった。
風呂場を泡まみれにされていて、門倉は簡単に掃除を終えると部屋へと戻った。
しかし、そこに綾人の姿がなく青ざめる。
同時に寮長専用の携帯電話が鳴り響いた。
まさかと電話に出ると、焦った寮生の声が鼓膜を震わせた。
「か、門倉先輩!白木がぁ〜!!」
「今どこにいる!?」
「一階、エントランスです」
なぜそんな所にと門倉は電話を切ると、まだ濡れた髪のまま部屋を飛び出した。
「俺に触んな!」
拳を振り回し、自分へ近寄ってきては下心を出す輩を綾人はぶん殴っていっていた。
こんな場所に居たくないと、簡単に荷物をまとめて門倉の目を盗んで部屋を飛び出したのだが、あちこちからお声をかけられ、寮をなかなか出られずにいた。
やっとの思いで一階エントランスへ着いたにも関わらず、今度は複数の高学年の先輩に囲まれてしまう。
「もっと気弱な子猫かと思ったけど、やたら反抗的な子犬だったんだな」
「こっち来いよ。遊んでやるから」
ニヤニヤ笑いながら詰め寄ってくる男共は綾人の抵抗を楽しげに笑っていた。
ガタイも良くて、人数も多いことから不安に顔を歪ませて後退していたら、壁に背中が当たる。
逃げ場を失い、パニックに陥りそうになったとき、バタバタと駆け寄ってくる足音に一同目を向けた。
額に汗を滲ませて、息を切らせる門倉の登場に少し安堵する綾人と、それらを鬱陶しそうに睨み付ける上級生にギャラリーは狼狽えた。
「綾、帰るぞ」
不機嫌な声で言われ、怖くなった綾人は足を動かさない。
上級生はそんな綾人の手を掴んで引き寄せた。
「白木のやつ、お前が嫌で逃げてきたんだろ?今日は俺らと遊ばせろよ」
ニタニタ笑う上級生の顔面へいきなり、門倉の拳が舞った。
呻き声と共に驚を突かれた上級生はその打撃に吹き飛んだ。
「汚い手で人のモンに触んな!」
その一発が致命傷となり、床へ倒れる上級生に周りは目を見開いた。
いつも物腰柔らかで、何事も穏便に片付けていく門倉の対応と打って変わった暴力的な有無を言わせぬ恐怖政治に一同凍りついた。
上級生達もいきなりの臨戦状態に硬直していた。
「綾、話があるから早く来い!」
たじろぎ、覇気をなくした上級生を一瞥すると、門倉は有無を言わさず、腕を引っ張って綾人を引き摺るように連れ去った。
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