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第228話

「・・・ここ、何処?」 真っ白な部屋には真っ白な箪笥。真っ白なソファと真っ白なテーブル。真っ白な物置で全てを白で統一した家具が並べられている部屋で綾人は目覚めた。 とても広い部屋には一つも窓が無く、扉が一つあるだけだった。真っ白なベッドの上に寝かされていた綾人は真っ白な足首まであるワンピースを着せられている。 そして、そのベッドは大きな鳥籠をイメージしたのか、白い檻のようなものに包まれていて、白い鉄格子へそっと手を這わせた。出入口らしき扉にはダイヤル式の南京錠が掛けられていて、開けられそうもない。 籠の中の鳥の気持ちをこの時、初めて綾人は味わった。 白ばかりの部屋に嫌気がさし、視線を伏せて気を失う直前の事を思い出す。 寮を出て、街をぶらついては映画を楽しんでいた。その時、隣の席に座った男が・・・ 「加賀美・・・・」 顔を青ざめさせて、恐怖に心が一瞬で支配された。同時に自分の両親を奪った男へ憎しみが生まれる。 昔の事件にて刑務所から精神科病棟へ放り込まれて軟禁されていると聞いていたのに、いつ出てきたのだと、混乱する頭で考えた。 次にふと、過ぎった考えは・・・ 「こいつのせいか・・・・」 以前の自分が消えた理由。 どんな方法で自分へ接触したのか知らないが、門倉へ恋をして最低でも2年間は到底消えたくなさそうな自分の人格が壊れた。 この男が現れたことで、強烈なトラウマに心が壊れたのだろうと今の綾人が察した。 ただ、顔を見たぐらいでは簡単に壊れたりはしない。 恐らく、過去の出来事の傷口を抉るような事が起こったのだろうと踏んだ。 どうりで、日記に書れていないわけだ・・・ 不安な気持ちとこれから自分はどうなるのか分からない恐怖に自然と体は震えていた。 今の自分がもしも、消える事でもあれば今後どうなるのか分からない・・・ いつも自分が消える時、それは新たな人格が決まって深い眠りに就くようなそんな安らかな瞬間を迎えるのだ。 だが、今回は壊されるのではと心臓が恐怖にドクドクと早鐘の如く鳴り響いていた。 「・・・うっ・・、かはぁっ!ぉえっ・・・」 極度のストレスから、頭痛と共に吐き気を伴い綾人は嘔吐する。 服とシーツを汚して、ゼイゼイ荒い呼吸を繰り返す。 続いて過呼吸が襲ってきて、息苦しさに体を丸めてベッドへ倒れこんだ。 どうしよう・・・ 怖い・・・、助けて・・・・ 助けて・・・ 「・・・ゆう・・いち・・・」 閉じた瞼の裏側に門倉の姿が映って、綾人は無意識にその名を呼んでいた。

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