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第240話

絶対安静と医師にキツく言われながら綾人は退院した。 門倉にしつこく同じ部屋へと誘われたが、一人の時間が欲しいと言って、寮の自分の部屋へと綾人は戻った。 直ぐに勉強机の引き出しに手を掛け、手帳兼日記を取り出す。 ペラペラとめくって自分が消えた後の情報を探った。 「・・・・僕、門倉先輩とずっといたんだ」 日記にはやたらと門倉の名前が出てきていた。 優しいような厳しいようなよく分からない男だが、側にいるとどこか安心すると日記には記されていた。 一から始まった関係からでも門倉に自分が惹かれていたことを知って、笑みが溢れる。 綾人は少し揺れる気持ちの中、日記を介して学校でのこと、門倉のこと、ざくろや九流のこと、そして・・・、加賀美のことを知っていった。 体もだが、心もしんどくて何度か休憩を挟んだが、全てを読み終えるとベッドの上へ横になった。 「結構、やらかしてたな〜」 憎まれ口を叩いてはクラスメイトや友人、門倉を振り回していたことに苦笑した。 上手にまた自分のペースへ周りを引き戻せるか謎だったが、自然と心は弾んだ。 あまり、良い子になり過ぎなくても良いのかもしれない・・・ 傍若無人な前の自分の言動に嫌なことをされたら嫌と言って、笑顔を保たなくてもいいのかもしれないと思うと心が軽くなった。 「門倉先輩に会いたいな・・・」 日記の中の自分は門倉をどうやら「優一」と呼んでいたようだ。 今の自分より、もしかしたら前の自分の方が門倉の好みだったらどうしようと要らぬ不安がよぎった。 「厚かましいよ・・・。僕でも呼んだことないのに・・」 自分自身に嫉妬をしては悔しそうにシーツを握りしめた後、よいしょと体を起こして、いてもたっても居られず門倉に会いに行こうと扉を開く。 「え!?先輩‼︎?」 扉の所にまさかの門倉が立っていて綾人の心臓が跳ねた。 「何処か行くの?体は平気?付き纏うつもりはないけど、心配なんだ・・・」 自分の目を見て、頼むから側にいてくれと囁く門倉に綾人は門倉の服の裾を掴んで小声で告げた。 「門倉先輩の部屋に行こうって・・・」 その言葉を聞いて、門倉は一瞬驚いた顔をしたが直ぐに笑顔になって綾人の体をふわりと抱き上げた。 いわば、お姫様抱っこをされたのだが、正直体が辛いこともあって綾人はされるがまま門倉に身を任せた。

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