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第242話
「はぁ・・・んっ、だ、だめっ・・」
気遣うように体を撫でられ、熱が昂ぶるに連れて綾人は青ざめては体を震わせた。
「綾?痛いのか・・・?」
体が辛いなら止めようと門倉が手を止めて顔を覗き込むと、綾人はガタガタ震えて体を丸める。
体が痛いとかそういった類の苦痛では明らかになさそうで、どうしたのかと聞いてみる。
「綾?大丈夫か?どこか痛い?痛み止めの薬・・・」
「ご、・・ごめんなさいっ!ごめんなさい・・・」
震えて繰り返し謝罪してくる綾人に門倉は眉間に皺を寄せた。
「綾ちゃん、ちょっと俺の顔見て!」
何か底知れぬ恐怖と闘う様子の綾人の頬を両手で挟み、門倉は目と目を合わせた。
蜂蜜色の瞳が明らかな動揺を見せて、恐怖に揺れる。
「何を謝ってるの?何がそんなに怖いの?俺に教えて?」
優しく安心させるように聞くと、綾人は震える唇で答えた。
「こ・・・、こういう事、しちゃダメって・・。加賀美が・・・汚いって・・」
涙を浮かべ、監禁されていた時にトリップした様子の綾人に門倉は焦った。
「む・・・鞭で叩かれるっ・・。どうしよう・・・怖いぃ〜・・」
ガタガタ震えて抱きついてくる綾人を門倉は強く抱きしめてあやすように何度も頭を撫でた。
「大丈夫だよ。もうあいつはいないから・・・。もう一生、綾の目の前には現れない。何も怖くないし、悪い事なんてしてない。綾は汚くないよ」
よしよしと頬へキスをし、パニックを起こす綾人にゆっくりと首筋へ顔を埋めていった。
体を強張らせ、ビクビク怯える綾人に門倉は大丈夫と何度も囁き続ける。
「綾、俺の事だけ考えて。他は考えなくていい」
それなら簡単だろ?と、笑って唇へキスを落とすと、綾人は小さく首を縦へと振った。
「こ、怖いっ・・・、はぁ・・やっぱりダメっ・・・やだぁ・・ごめんなさ・・・ぃ・・」
自分から誘っておいてなんだが、トラウマと恐怖心が大きくて無理だと謝る綾人は門倉の胸を押し返す。
いつもなら、甘いキスと体を撫でたらそれなりに反応を見せてきた綾人の体は無反応なままだった。それどころか、本当に恐怖で心と体が萎縮している事が見て取れた。
震えて怯える姿が痛々しいこともあり、無理をさせるつもりはさらさらなくて、門倉は小さな体を優しく抱きしめ、ベッドの上へ一緒に横へとなった。
「ん。気持ちだけで十分だよ。ゆっくりまた進もう・・・」
大丈夫、大丈夫と、頭へ唇を落とし安心してと何度となく告げた。
申し訳なさそうな顔で綾人は門倉へ視線を上げたが、柔らかな微笑みとぶつかり、安堵からそっと瞳を閉じてそのまま逞しい胸元へと顔を埋めた。
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