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第244話
子供用の海外物のアニメがテレビで上映されていて、綾人は夢中でそれを見ていた。
ネズミが猫へ悪戯をしては血相変えて追いかけられるという単純なストーリーがとても面白いのか釘付け状態だ。
こんな姿を見ると、本当にまだ小学生なのだと思い知る。
「・・・綾ちゃん」
腕を組んで壁に寄りかかりながらその姿を十分堪能した後、夢中になる綾人へ声をかけると、綾人はハッと門倉へ顔を向けた。
「あ!お話終わった?あのね!これ、凄く面白いよ!」
テレビを指差し嬉しそうに薦められたが、どう見ても高校生が見ても絶対面白いとは思わないアニメだ。それを言うのも悪い気がして門倉は笑顔で頷いた。
「俺もこれ知ってるよ。気に入ったならDVD買って帰ろう」
「本当!?」
嬉しいと、手を叩いて喜ぶ姿に門倉はおいでと手招きする。
靴まで脱いでキッズルームに入り込んでテレビを見ていた綾人は手早く靴を履くと、急いで門倉の元へと駆け寄った。
「せんせー!僕、帰っていい?」
診察室にヒョッコリ顔を出して聞くと、速水が新しいイチゴ味のお菓子を持って見送りにきた。
「また来月待ってるね。何かあったら直ぐおいで」
お菓子を手渡され、はーい!と、元気に返事する綾人の手を繋いで門倉は病院をあとにした。
約束通りDVDを買って、お菓子とジュースも買い込んだ二人は寮へと戻った。
そのまま街を散策しても良かったのだが、綾人がそわそわして、周りを気にかけていたので止めることにする。
加賀美がまた姿を現わすのではと恐怖を抱いているのだろう。それを察して門倉はタクシーを止めて出来るだけ早く寮へと戻った。
寮の部屋へ帰ると、綾人は明らかに安心する表情を見せてソファへと寝そべった。
コロコロしながら買ってあげたDVDを眺めていたので、門倉が中身を取り出しデッキへセットしてやる。
クッションを胸に抱いてテレビ画面を食い入るように見つめ、上映される先ほどのアニメを綾人は見た。
それを横目に可愛いなと、門倉は仕事兼勉強用デスクで生徒会業務を行った。
数時間が経ち、休憩がてら席を立って綾人のいるソファへ向かうと、そこにはスヤスヤ寝息を立てて眠る姿があった。
テーブルには食べ散らかされたお菓子とジュースが散乱し、DVDはエンディングを迎えていた。
久しぶりの外出で疲れたのだろう。
ベッドへ運ぼうかと手を伸ばしたが、服の裾から見える綾人の腰や腹が刺激的で門倉の手が止まった。
バツが悪そうに視線を逸らしてその場を離れ、毛布を持ってくる。
正直、溜まるものがあって門倉自身ギリギリな状態でもあった。
自分へ無理をさせていると分かっているからか、綾人はいつも気にかけた様に情事を誘ってくる。
だが、結果いつもパニックに陥って中断。
申し訳なさと、気まずい空気が二人を包んでいつもそんな綾人を慰めて眠りにつくのだが、好きな子が隣にいて、寸止めを受ける行為はなかなかの拷問だと門倉は天を仰いだ。
だからといって、今の綾人へ無理をさせるわけにもいかず・・・
「はぁ〜・・・。どうしたもんか・・・・」
ガクリと肩を落としてうな垂れた。
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