246 / 309

第246話

side 門倉 「門倉、悪かったな・・・」 九流は綾人達の姿が見えなくなるや、ずっと心に引っかかっていたことを素直に謝罪した。 門倉の視線が何に対しての謝罪なのか分からないと向けられ、九流は続ける。 「あの時、俺が白木へ財布を渡さなければって・・・」 「あぁ!それ!?そんなの、気にしてるわけないだろ?それに、俺も綾のああいうズルいところ知ってたのに気を抜いて見過ごしたんだ。どっちかっていうと、俺のミスだから。猛は気にしなくていい。それより・・・」 門倉は小さく息を吐くとトンッと九流の肩へ額を置いて、囁いた。 「あの時、止めてくれてありがとう・・・。マジ、助かった」 その言葉に九流は門倉が加賀美を殺そうとしたあの光景が瞼の裏に蘇った。 あの一件も九流にとれば、親友に疎まれて責められるやも知れぬと思っていたことなだけに、門倉の礼に胸を撫で下ろす。 「・・・・加賀美はあれからどうなった?」 ずっと疑問だった事を九流が聞くと、門倉は顔を上げていつものように笑顔を見せた。 「門倉家と加賀美家連動で監禁することになった。一生外へは出られないよ」 暗く黒い笑みを浮かべ、吐き捨てる門倉に九流はそうかと頷くと、二人は教室へ向かうべく足を進めた。 「白木の容態はいいのか?」 「まぁね。ただ、エッチができない」 今の最大の悩みだと額を押さえて溜息を吐く門倉に九流がぶはっと吹き出した。 「なに、嫌われてんの?」 「そんな単純なことじゃねーよ。はぁ〜・・・、それより溜まってしかたねぇ」 「どっかで発散すれば?最近、ストイックなお前の色気に誘われて告白連発だろ?」 ククっと笑って面白半分で揶揄うと、門倉は肩を竦めてボヤいた。 「いや、マジで何とか抜かねーと、このままじゃ綾に何するか分かんねーわ」 ここ最近の綾人との中途半端な情事と無邪気な天使の姿に当てられている門倉は理性を保つのに必死だった。 かといって、他で遊ぶのも如何なものかと頭の中を過ぎらせ、日々悶々と雑念に頭を悩ませていた。 「あの・・・、門倉会長!」 教室の扉を潜る寸前、後ろから呼び止められて門倉は振り返る。 そこには顔を真っ赤にした整った顔立ちの生徒が立っていた。 「確か隣のクラスの・・・」 「はい!田中です!あの、昼休み時間もらえませんか?」 同級生なのに丁寧な言葉遣いで伺いを立ててくる田中に門倉はクスッと声を立てて笑った。 「中庭で話を聞くよ。じゃあね」 ひらひら手を振り、それだけ告げると門倉は九流と教室の中へと入っていった。 どうせ、いつもの告白だろう。 さらりと受け流し、昼食は一緒に食べようと誘った綾人の元へ行こうと門倉はその時、簡単に思っていた。 side 門倉 終わり

ともだちにシェアしよう!