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第249話
どうしよう・・・
結局、昨日も失敗した
次の日、綾人は上の空にて授業を受け、小さな何度目かになる溜息を零していた。
精神安定剤の副作用のせいか安心感を感じた途端、睡魔に襲われ昨日は門倉にあやされるまま朝まで眠ってしまった。
いつも自分から誘ってはこんな失態を繰り返して門倉を困らせている。
一度、自分の誘いに門倉がその気になったことがあったが、その時は綾人は泣いて気が狂ったように喚いて大惨事になった。
完全に加賀美に支配された自分に涙が滲む。
「このままじゃ・・・・」
捨てられる
門倉との時間は残り二年を切っている。
秋も過ぎ、もう冬だ。
来月は12月になる。
悔いが残らない恋愛をしたい
したいのに・・・
「悔しい・・・・っ・・」
涙声で小さく呟くと、綾人は机の上へ突っ伏した。
そんな気持ちを抱えたまま12月になり、クリスマスが近いことから街はイルミネーションと煌びやかな装飾品で彩られていた。
付いてくると言っていた門倉を残し、綾人は今日、一人ではやみ診療所へ診察を受けに来ていた。
しかし、結果は大して変わらない。
恥を忍んで速水に門倉との営みを相談すらしたが、返ってくる答えは「無理をしないように」だった。
いつも通りの薬を処方されて、気を落としてタクシーへ乗り込み、街の浮き立つ景色を眺めながら寮へと戻った。
「門倉先輩!?」
エントランス前に車を横付けすると、そこには門倉が自分の帰りを待っていて綾人は驚く。
その次に、大勢の寮生に囲まれた姿に心を曇らせた。
支払いを済ませてタクシーから降りると、生徒達を振り払って門倉が走り寄ってくる。
「一人でちゃんと行けた?速水は何て?」
心配そうな顔で自分を見下ろす門倉の後ろへ視線を向けた。
ざっと5、6人はいる生徒の中には以前セフレでもいいと泣きついていた男の子も混ざっていた。
それが嫌で綾人は他の人間に見せつけるように門倉に抱きついた。
「・・・先生がエッチしていいって!パニックになっても一回したら大丈夫って言ってた!!」
パニックになっても吐いても泣いて喚いても、もう門倉が満足するなら抱いてくれと綾人は強請った。
加賀美の呪いに加えて、門倉まで奪われたらもう立ち直れそうにない。
首に回した腕をぎゅーっと自分へ抱き寄せて、お願いと念じながら抱きつくと門倉は綾人の腕を離させて顔を顰めた。
「速水が本当にそんなこと言ったのか?」
怪訝な顔で聞いてくる門倉に綾人は目を泳がせながら、頷く。
小さな子供が嘘をつく時のような狼狽えっぷりに門倉は溜息を漏らすと、綾人の手を引いて生徒達を散らし、部屋へと戻った。
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