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第256話
「理事長のペナルティーウザそうだな・・・」
早足で理事長室へと門倉は向かいながら隣を歩く九流へボヤいた。
綾人が気になるのかいつものような余裕さは無く、どこか気を焦る雰囲気を出す門倉に九流が溜息を吐く。
「お前、盛り過ぎじゃねぇ?」
「猛に言われたくない」
自分を見失いつつある門倉へ嫌味を含む忠告をしたら、完全なる皮肉が返ってきて九流は押し黙った。
学校へ着き、エレベーターへ乗ると身だしなみを整えるべく二人はネクタイを締め直す。
「理事長の話、早く済めばいいな」
「ああ」
二人して気が重いと息を吐くと、門倉は部屋に残してきた綾人を想った。
猛が言うようにこの一週間、頭がおかしくなったんじゃないかってぐらい盛っていたな・・・
もう一生、綾人には触れられないかもしれかいと考えていた分、喜びが大き過ぎた。
それと同時にどこまで綾人が受け入れてくれるのかが気になって求め過ぎてしまった。
ご飯を食べる時間も惜しんでは抱いたが、そろそろ人並みの生活に戻してやらねばと門倉は反省する。
最上階へと着いてエレベーターの扉が開くと、二人は真っ直ぐ理事長室へと向かった。
扉を二度ノックすると中から凛とした声が聞こえ、扉を押し開く。
「失礼します」
二人して一礼してから入室すると、理事長は大きなデスクの前に座ってパソコンを叩いていた。
「やっと来たか。不良会長と不良副会長」
満面の笑顔と打って変わった声と言葉はとてつも無くトゲトゲしくて二人の顔が凍りつく。
ソファへ座れと命じられ、二人は会釈してから並んで腰を下ろした。
「っで?そろそろ恋人に溺れるのは止めて、やるべき事をこなす気にはなったかい?」
ドサッと二人の前へ乱暴に座る理事長が長い足を組みながら聞いてきた。それと同時に分厚いファイルを三冊目の前の机に投げるように渡される。
「君達の穴を私が埋めておいた。この後は君達が引き継ぎ、最後まで全うしろ」
有無を言わさない理事長の命令に二人は首を縦に振りながらファイルを手に取り、中身を確認する。
それは生徒会会長と副会長が本来為すべき業務内容で、この一週間の仕事をどうやら理事長が担っていたようだ。
「大変申し訳ありませんでした・・・」
流石にこれはヤバイと感じた門倉が殊勝な態度で謝罪する。次いで、九流も頭を下げた。
それを見た理事長は腕を組んで二人をキツい口調で叱咤した。
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