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第259話
「ところで理事長の話なんだったんですか?」
ざくろが首を傾げて門倉と九流へ聞く。その質問に二人は思い出したと言わんばかりにがくりと肩を落として来年度の生徒会任期を続投する事を告げた。
「生徒会長はどっちがなるんですか?」
イチゴ味のチョコレートを口に放り込みながら何気無しに綾人が聞くと、叫ぶような二人の声が室内に響き渡った。
「門倉に決まってるだろっ!」
「猛に決まってるだろっ!」
見事にハモりを見せた九流と門倉は互いの台詞に顔を向け合い不穏な空気を流し出す。
「俺は今期したんだから、お前が会長しろよ!」
「はぁ?ふざけんな!理事長に言われたのはてめぇ、だろ?てめぇが自分でこのまま責務果たせ!」
「俺がしようとお前がしようと同じだろ?変われってば!」
「やだね!お前がやれ!」
会長はお前だと罵り合う二人の喧嘩がヒートアップしてきて拳を握りしめ合う二人にざくろと綾人が間に入る。
「と、とりあえず!少し冷静になってから考えましょう!」
「そうそう!今は今の責務を各々努めましょう!」
ざくろと綾人の言葉に九流と門倉が二人を睨み付けた。
「なんか、他人事のように言ってるけど俺らが続投ならざくろ!お前だって生徒会へ入れるからな」
「はぁ!?」
「当たり前だろう!綾、お前もだから。どの役職がいいのか考えておきなよ」
「えぇ!?」
二人の職権乱用を用いた命令にざくろと綾人は青ざめて硬直した。
二人の戯れとも思えた言葉は本当のことだったようで、門倉と九流は12月のもっとも華やかで賑わいを見せるクリスマスパーティーの準備と並行に来年度の生徒会候補者を集めていた。
クリスマスが明後日と迫った22日、ざくろと綾人は生徒会室へと呼び出された。
「ざくろは生徒会書記に任命。白木は厚生委員長に任命な」
九流が先に渡しておくと任命書を渡してくる。それを受け取った二人は荒れに荒れた生徒会室へと目を向けた。部屋はごった返しになっていて、他の役員へ目を向けた綾人がポツリと呟く。
「今の役員の方々は続投しないの?」
その考えなしの言葉に部屋にいた役員全員がぴたりと動きを止めて綾人へ牙を向けて吠える。
「「「この人達の下でこれ以上、働けるかっ!!!」」」
あまりの迫力に綾人は目を見開き、息を呑んで黙り込む。
それを見た門倉が幼馴染みの九流を親指でさして笑顔で告げた。
「来年は俺じゃなくて猛が会長だよ?」
「「「一緒です!!!」」」
綺麗に声を被らせる役員達にざくろが失笑した。
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