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第261話

12月23日。世の中はクリスマス前だと忙しなくも浮き立つ今日、いつもの慌ただしさもない生徒会室は不気味なぐらい静かだった。 祝日ということで、門倉は正午にて来年春からの新学期を迎える生徒会メンバーをこの場に収集させた。 生徒会長 九流 猛 副会長 門倉 優一 風紀委員長 門倉 咲也 会計委員長 九流 渉 体育委員長 二宮 神楽 厚生委員長 白木 綾人 書記 兼、生徒会長の補佐 西條 ざくろ 「ざっちゃ〜ん!おひさぁ〜!!」 「渉君、こんにちは」 約束の時間10分前に生徒会室へ着いた九流の弟、渉がざくろを見るや、飛びついてきた。 自分より遥かに身長も高く逞しい渉だが、とても甘え上手で気さくな事から大型犬のワンコの様だとざくろは常々思っていた。よしよし頭を撫でて抱き締めてくる渉を可愛いと受け止めていたら、九流の拳が渉の頭上にガツンと落ちた。 「いってぇ!」 「ざくろに抱きつくな」 「兄弟なんだからいいじゃん!」 「男兄弟はこんなキモいことしない」 九流がバシッと切り捨てるように言うと渉はブーブー唇を尖らせ、ざくろから身を引いた。 緊張感に包まれていたざくろと綾人だったが、渉の底なしの明るさに笑顔が浮かぶ。 次に体育委員長を務める三年A組の二宮 神楽が入室してきた。 「あれ〜。皆んな早いね〜」 175センチほどの長身でスラリとした男は人が好みそうな優しい笑顔を見せた。 サラリとした茶色の髪に茶色の瞳。 綺麗と可愛いが入り交じる風貌はとても魅力的だが、醸し出す雰囲気が悪い男の色香を漂わせていて少し怖かった。 「あ!これが優一の恋人?噂の天使ちゃん?」 二ヒヒと、意地悪そうな顔で自分の前へ立つ男に綾人はビクっと体を竦めた。 「いい反応じゃん。優一がクルって言うだけあるね〜」 顎をクイッと持ち上げられ、顔を覗き込む様に品定めしてくる男の手を黙って見ていた門倉が叩き落とした。 「神楽。俺のものに気安く触るな」 にっこり微笑む笑顔にて牽制する門倉に神楽と気さくに呼ばれた男は満面の笑顔で謝罪した。 「ごめん。ごめん。なんだか、気が付けば吸いつけられるように手を出してたよ〜。これ!お詫びにあげる。かなり良かったよ〜」 掌サイズの黒い箱にピンクのリボンでラッピングされたものをプレゼントしてくる神楽に門倉は綾人を見たあと、やらしい笑みを浮かべた。 「神楽。サンキュ」 小さな声で礼を告げ、ポケットの中へと直す門倉に神楽と九流を除いた人間が首を傾げた。 「ところで噂の弟君は?」 綾人へも興味があったようだが、どうやら門倉の変態ゲス野郎の弟、咲也にもかなり興味があるらしく神楽は室内を見渡した。 その事に対し、風紀委員長に就く咲也だけがまだここへ到着していなくて門倉は鬱陶しそうに舌打ちした。 「先輩?」 明らかに苛立った様子の門倉に綾人が顔を覗き込むと門倉は綾人に心配かけまいと笑顔を作った。 「愚弟のせいで時間押してごめんね。来たら殴っていいよ」 優美な笑顔に反比例する台詞を告げる門倉に綾人の顔が引きつった。 その時、生徒会室の扉が叩かれ噂の変態ゲス野郎、門倉 咲也が入室してきた。 「遅れてすみません」 一同、全員が扉へ視線を向ける。 そこには門倉と同じ紅茶色の髪。そして瞳を隠すように薄いフレームの眼鏡を付けた少し華奢で幼さを残す儚げな風貌の男の子が立っていた。 門倉の弟と言うだけあってとても良く似た容姿だが雰囲気は兄とは間逆でとてもピリピリした神経質かつ不機嫌そうな面持ちの男の子だった。 とてもではないが変態ゲス野郎には決して見えない。

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