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第263話

・・・・・え? 何・・・?僕、凄い言われようじゃない? 「・・・僕と君って初対面だよね?」 わなわな震える指先で咲也を指すと咲也が腕を組んで吐き捨てるように綾人の悪口を罵った。 「そうだね。こうして顔を合わせるのは初めてだな。こっちは大切な兄がお前のような豚の為に怪我をしたから病院にてその汚い面は見て知ってるけど!」 耳を塞ぎたくなる程の口の悪さと悪口に綾人は硬直するものの、加賀美での車の事故を言っていることが理解できて頭を下げた。 酷い物言いだが、大切な身内が自分のせいで傷付いたのだ。非があるのはこちらと綾人は謝罪した。 「その節は大変なご迷惑をお掛けしました・・・。ごめんなさい・・」 殊勝な態度の綾人ではあったが、咲也の悪態は止まらない。 「謝って済むと思ってんの?つーか、本当に悪いと思ってるなら兄様の前から消えろ!このゴミ!!周りから可愛いってはやし立てられてるらしいけど、天狗になってるなら思い上がりもいいとこだ!そのブッサイクな顔面鏡でも見て整形しろ!バーーーカッ!!」 あっかんべーっと、止まらない罵りは綾人のみならず、周りの人間の思考をも奪い取るような悪口だった。 更に、生まれかつて吐かれた事のない類の負の言葉の数々に綾人の思考回路が停止した。 それを見ていた門倉が弟の後頭部を思い切り平手打ちする。 「綾にそれ以上何か言ったら本気で殴るぞ」 冷ややかな視線を向けて咲也へクギを刺す門倉は弟を突き飛ばし、綾人の手を引っ張り抱き寄せた。 「綾はこいつに気後れする必要ないから。気に食わなかったら殴っていいよ。やり返されたら俺に遠慮せず言うように」 こめかみへキスと共に優しく言われ、嬉しい反面、周りの視線が痛すぎて綾人は精神的苦痛に襲われた。 その中でも咲也の視線が一番痛い。 呪い殺されそうな程の勢いを見せる咲也からは、見えるはずのない炎がメラメラ見えた。 咲也の自分のことが気に食わない事実に綾人は門倉の体を押し戻す。 「お願い。僕に構わないで・・・」 この生徒会で上手くやる方法。 それは門倉から離れることかもしれないと綾人は察すると、そそくさと門倉の手をすり抜け、ざくろの隣へと移った。 少し寂しそうな門倉だったが、本来の目的を成そうと気を取り直し、軽く咳払いするとにこりと微笑んで皆をそれぞれのデスクへと座らせた。

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