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第271話
side 門倉
咲也が原因かな・・・
綾人が気を落とす理由は、あの毒を吐きまくる弟のせいだと門倉は認識していた。
何を遠慮しているのか分かんないけど、健気な綾ちゃんは可愛いな・・・
ただ、もう少し頼ってほしい。
綾人はとても我慢強く、人に基本頼らない。
それは悪い事とは思わないし、ある意味門倉の中では美学とも取れた。が、恋人となると別だ。
自分の事が好きだと口に出して認めた辺りから綾人の雰囲気が一変したのを門倉は感じていた。
柔らかく、自分を見る目が優しくてキラキラしている。
無自覚なのだろうが、それが可愛くて可愛くて自制が利かず、最近は綾人を苛めてしまい過ぎていた。
あの神楽が寄越したエネマグラも嫌がる綾人へ結局連日試しているし、週末のみの関係を求める綾人を捩じ伏せては弄んでいた。
泣いて本気で嫌がる時もあるが、不機嫌な声を出すと不安そうな顔で折れてくれる綾人に愛情を感じた。
どこまで自分を受け入れてくれるのか知りたい。
どこまで自分を愛してくれているのか測りたくて日夜、門倉は綾人を困らせていた。
愛想を尽かされ、捨てられないギリギリのラインを見極めながら、綾人を可愛がりるのが楽しくて仕方がなかった。
門倉のドス黒く捻じ曲がった感情と想いはこうして日々ウズウズしては爆発する寸前で、それを受け止めなければならない綾人からすれば、ただの悲劇だった。
愛している
その想いは変わらない
笑う顔も好き
大切にもしたい
だけど・・・
「今は泣いて縋って困り果てる綾ちゃんが見たいな〜」
極悪非道の性格剥き出しの本音を呟くと、咲也の愚痴を吐いて頼ってくる天使を期待しようと、悪魔は軽快な足取りで会場へと向かった。
side 門倉 終わり
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