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番外編・一緒に暮らそう 3話

「ただいま」 「……おかえり。って、どこ行ってたの?行き先ぐらい言いなよ。心配するだろ?」 生徒会の仕事なのか私情なのか分からないが、机の上でノートパソコンを開き、業務に励んでいた様子の門倉を綾人はジッと見つめた。 九流は門倉に反抗し、『理想』を壊せと言った。 だけど綾人自身、実のところ門倉の『理想』というものがいまいち分からない。 「何?どうかした?」 「……いえ。ざくろのとこにいました。っていうか、心配も何も気になったなら電話ぐらいしたらいいじゃん」 「電話しなくてもどうせ西條の所か、談話室だと思ったから」 パタンっとノートパソコンを閉じて肩が凝ったと腕を回しなら言う余裕綽々の門倉に綾人はムカムカする。 だったら、心配するとか言うな! つーか、行き先聞かなくても良くない!? ギュッと握り拳を作って眉間に皺を寄せた時、門倉が近寄ってきて顎を掴まれる。 「で?綾ちゃんは何に腹立ててんの?そんな怖い顔して」 整った綺麗な顔が優美に微笑み、距離を詰めてくる。 当たり前のようにキスをしようとしてきて、綾人はそれを阻止するように頭を振って門倉の手を払った。 驚いた顔で自分を見下ろしてくる門倉に少し怯えたが、綾人は屈するなと自分を叱咤して素っ気なく言い放つ。 「今はキスしたくない」 「じゃあ、いつならいいの?」 間合いを詰めて振り払った手を握られ、綾人は狼狽えた。 押しの強さが半端なくて頭の回転が付いていけなずにいると、答えないとキスするぞと意地悪な顔が近付いてきた。 「え…っと、いや、その……。き、今日はやだっ!」 「じゃあ、明日はいいんだ」 ふーんっと、やらしく笑って拘束を解く門倉は綾人から身を引く。 そのまま何もなかったかのように満面の笑顔で夕食を食べに行こうと誘うと、小さく頷く綾人と二人で部屋を出た。

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