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番外編・一緒に暮らそう 5話

「ざくろ!それに九流先輩も!」 一緒に食べようと笑って誘いかけてくるざくろに綾人は嬉しいと両手を挙げて万歳した。 「あのね!プリンが凄く美味しいんだ!ざくろ食べてみて〜」 甘えるように話しかけ、綾人は先ほど門倉にしたようにプリンをすくうとざくろの目の前に差し出した。 ざくろは躊躇することなく、そのプリンを頬張る。 「本当だ!なめらかで美味しい!」 行儀作法なんて頭の片隅にもないざくろが無邪気に喜ぶ。 その姿が可愛いと九流はざくろの目の前に自分のプリンを差し出した。 「気に入ったなら俺のプリンも食べろよ」 ふにふにとざくろの頬を摘んで嬉しそうに笑う九流にざくろはそのプリンの封を開けて綾人が自分へしたように九流へ食べさせようとした。 「九流先輩も食べてみて下さい!美味しいですよ」 九流もまた1秒程の躊躇いをみせたが、直ぐに差し出されたプリンをパクッと食べた。 「甘さ控えめで美味しいな」 柔らかな笑顔と頭を撫でてくる九流にざくろがえへへと愛らしい笑顔を見せる。 その一連の流れを見ていた門倉は呆れたように溜息を吐くと、黙々とスープにサラダと食事を口に運んでいった。 楽しい夕食を終えた四人は部屋へ帰ろうとした。その時、綾人とざくろのクラスメイト達が談話室でたむろっていて、綾人を呼んだ。 「白木!一緒にゲームしよう!」 複数いる男の群れは綾人に絶大な好意を寄せている親衛隊だ。 綾人はそんな好意を寄せる男達をうまくコントロールしながら付き合いをしているが、その事実がまた門倉には気にくわない一つでもあった。 「綾ちゃん、今日は帰っといで」 やんわり断れと催促してくる門倉に綾人はひらりと身を翻して談話室へと走った。 「門倉先輩!先に帰ってて!僕、少し遊んでから帰る」 ゲーム機を持つクラスメイト達に触発された綾人は嬉々として輪の中へと入っていった。 その姿を嫌そうに目を細めながら門倉は小さな溜息を吐いて踵を返した。 その光景を見ていた九流が隣に立つざくろへ質問する。 「アレも白木の計算か?」 「いや、天然だと思いますよ」 門倉を蔑ろにして別の男達と戯れる姿を見せつける綾人に九流は感心した。 ざくろの交友関係には害がない限り口を挟むつもりはないが、綾人の周りは下心満載の狼が多い。それは誰が見ても明白で、綾人も分かっているはずだ。 それなのにこうしてそんな輪の中へ飛び込むのは言わば自滅行為。 黙って身を引く門倉が不思議ではあったが、よく黙って身を引けるものだと九流は幼馴染みへも感嘆の息を漏らした。

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