304 / 309
番外編・一緒に暮らそう 9話
「なんだか、しんどい……」
午後の授業を終えた放課後、綾人は教室の自分の席から立ち上がる事もせず、机の上に突っ伏してはボヤいた。
それを見ていたざくろが首を傾げる。
「門倉先輩、相変わらず?体、平気?」
いつもハードなプレイに付き合わされていて体がダルいと愚痴をこぼしていたからか、ざくろが要らぬ勘違いで心配してくる。
その事に顔を赤くして、綾人は溜息を漏らした。
「……?」
何処と無く深刻そうな綾人にざくろが首を傾げると、小声で呟く天使のボヤキに今度はざくろが赤面して大声を出す。
「僕もアブノーマルなのかな…」
「はぁ!?」
内容が内容なだけにざくろは慌てふためき、周りを確認した。
運良く周りは殆どの者が帰宅していて、今の話は聞かれていないようだった。
ざくろは綾人の前の席に座って不貞腐れた顔をする天使を覗き込んだ。
「ど、どうしちゃったの!?門倉先輩と喧嘩?ここ最近、揉めてる様子なかったし仲良しって思ってたんだけど」
あのノーマルセックス実行から1ヶ月が過ぎようとしていた。
門倉は自身が言った言葉に責任を取るように優しく丁寧であっさりとした情事を週一ペースで綾人に与えてくれていた。
生活の暮らしでも、綾人にアレコレ指図することも減ってきていて、特にこれといったストレスもなければ、前に比べると断然住みやすくなっている。
なのに、心が晴れない……
理由はなんとなく分かっていた
「門倉先輩、誰と浮気してるんだろ…」
蜂蜜色の瞳を暗くさせ、呟く綾人にざくろが目を見開く。
「浮気?……門倉先輩が!?してるの!?」
嘘だ‼︎と、身を乗り出すざくろに綾人が力なく笑った。
「してるよ。じゃなきゃ、あんなに上機嫌なわけない。僕で最近、発散もしてないし。ってか、人並みに満足すらしてないから……」
いつも綾人だけを気持ちよくした情事後、一人で抜いては終わる門倉に綾人は心苦しさが積もっていた。
あれ程、やめてと言い続けたエッチ内容だって頑なに曲げてこなかった門倉が趣旨変えしたのだ。
ひとえに愛のおかげといえばそうなのだろうが、その愛も他所で発散されているのだと思えば、前よりかなり心の負担が大きくなった。
こんなことなら門倉の好きにさせれば良かった……。
今のエッチだって気持ちは良いけど綾人自身、実の所満足していない。
初体験からハードなプレイばかりだったからか、体が『ノーマル』というものでは足らなくなっているのかもしれない。
心のみならず、体までも門倉の虜になったのかと綾人はヤキモキした。
何よりも今は浮気されている事が苦しかった。
どんなプレイでもちゃんと付き合う。
嫌って言わないから、他の子に触れないで……
言いたいのに言えないジレンマが最近辛くて、綾人は部屋に帰りたくなくなっていた。
だけど、自分が帰らなきゃ門倉はその浮気相手の所へ遊びに行くのではと思うと、部屋を開けられずにいた。
「どうしよ、ざくろ。苦しいよ……」
ともだちにシェアしよう!