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番外編・一緒に暮らそう 10話

「ただいま〜」 ざくろに愚痴を吐き捨てた後、綾人は重い足取りで部屋へと帰った。 しかし、そこに門倉の姿はなくて綾人の胸がぎゅーっと押し潰される。 今日は帰るの一時間も遅くなったから、遊びに行っちゃったのかな…… 浮気相手の所だろうかと心を曇らせていた時、部屋の扉が開かれた。 「あっ!綾、おかえり!今日は遅かったね」 玄関口で立ち尽くす不安そうな表情の綾人にどうした?と、微笑みかける門倉の手には携帯電話が握り締められている。 その携帯電話へ目を向けた時、コール音が鳴った。 着信相手を確認すると門倉はごめんね。と、部屋の外に出ようとしたのを綾人は抱きついて阻止した。 「だ、誰!?外で電話なんてしなくても中ですればいいでしょ!?」 責めるような口調で言うと、門倉は一瞬驚いた顔をした後、少しバツが悪そうに笑って携帯電話を切った。 「別に急ぎの相手じゃないし、また後にするよ。それよりどうかした?」 怒ってるような様子の綾人を宥めるように門倉が頭を撫でて抱き締めてくる。 自分の前で電話に出ようとしなかった門倉に対して怒りとショックが入り混じったが、綾人は抱き締められる腕の温かさに縋るように身を寄せた。 しかし、門倉の携帯電話が再びコール音を奏でることになりその温かな腕が離れていく。 「……綾ちゃん。ほんと、ごめん。3分だけ時間頂戴」 苦笑しながら、門倉は電話へ出ると同時に玄関の扉を開けた。 「やだぁぁあぁーーー!他の子のとこ行かないでっ!!エッチなこと、門倉先輩の好きなようにしていいからっ!!嫌って言わない!絶対言わない!!何でもする!!!」 わーんっと大きな声で泣いて見た目よりも大きな背中に抱き着くと、綾人は恥も外聞もなく大きな声で門倉を引き止めた。 「あ、綾!?」 何が一体どうなってるのかと、混乱した表情で門倉が綾人へ向き直る。 「浮気してるんでしょ?僕が普通のエッチがいいって言ったから他の子で発散してるんでしょ!?今の僕じゃ満足出来ないんでしょ!?僕も今のエッチじゃ満足してないもん!今までみたいにして欲しいっ!門倉先輩が好きなようにしてくれていいから他の子のとこ、行かないで!」 子供のようにわんわん泣いて、やだやだと駄々を捏ねる綾人に門倉は赤面していた。 その時、電話口から呆れた声が漏れてくる。 「なんだよ。綾ちゃん、全然ノリノリなんじゃん。優一の読み違いかよ?珍しいな。それなら、心置き無く俺があげたので仲直りしな」 その声の主には聞き覚えがあった。 門倉と同級生で同じ性癖の持ち主の仲が良い友人、二宮 神楽だ。 それじゃあな〜っと呑気で明るい声と共に携帯電話の通話が切られる。 それに対し、綾人はボロボロ流れる涙を手の甲で何度も拭ってヒックヒックとしゃっくりあげながら、門倉と携帯電話を交互に見つめた。 そんな幼さを残す天使に門倉は参ったなと額を押さえて、綾人へ微笑みかけた。

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