4 / 6
ルール違反
「ゃ、あ、だめです……ッ!」
達巳の制止の声を無視し、萎えていた性器を口に含んだ。また亀頭を剥き出しにし、舌も使い達巳の性感を暴いていく。どうやら彼は、先端の方が弱いらしい。そこを重点的に責めてやると、達巳が身悶え腰を浮かせた。
「あぅ、んッ……! ゃっん、ぁあ……ッ……!」
まるで求めるように腰をくねらせながら、結城の髪を軽く掴む達巳。押し退けようとしているようだが、結城にとっては逆効果だ。思い切り煽られ、十分に育った達巳から口を離した。ギリギリの所で刺激が止んだ事で、苦しげな呻きが達巳の口から漏れる。
「は……ぁ……」
「こっちも、やらなきゃな」
「んッ……」
双丘の狭間に指を滑らせ、ローションボトルの蓋を開けた。そしてたっぷりのローションを手にし、それを達巳の下肢に塗りたくった。ぬるぬるとした感触に慣れないのか、達巳は少し気持ち悪そうに顔を歪めた。しかし、ぬめる指先を勃起した情欲に絡めると、すぐにぶるっと体を戦慄かせる。紅潮した頬を更に赤らめ、キュッと足の指先が丸めた。
「ふぁっ、あッ……ゃ、それ……!」
「気持ちいいだろ」
右手でぐちゅぐちゅと音を立てて扱き、しかし達する直前で愛撫を止めるなどしてコントロールしながら左手の中指を達巳の中に差し入れる。きゅぅっと締め付ける狭さは相変わらずだが、ローションのおかげで抜き差しはボディソープより格段に楽だ。
「やぁッ……っぁっ、んン……っ!」
「お前は感じやすいし、すぐによくなるって」
「そ……そう、でしょうか……ん、はぁ……ッ……」
「だって、痛くないだろ?」
「……はい……何か、むずむずします……」
その答えに気を良くし、指を根元まで埋め込み腹の裏辺りを探る。すると、即時に反応があった。前立腺と思しき場所をぷにぷにと指先で優しく抉ってやると、達巳は大袈裟なくらいに身を捩り、ダメです、と叫んだ。
「そこっ……や、っぁッ! ふあっ……ッ!」
「ビンゴだな。ヤダって言うけど、やめてもいいわけ?」
「ぃや、あ、ぅ……うそ、やめちゃ……や……」
涙目で腕を伸ばしてくる達巳を抱き寄せ、そのまま指を二本ねじ込んだ。圧迫感は増しただろうが、嫌がる素振りは鳴りを潜める。反応が一番あった箇所を擦りながら、自分を受け入れさせるための準備を続けた。二本の指で中を広げるように掻き回し、熱を持ち始めた縁も含めてアヌスを緩めていく。
「っ、あ! ゆぅきさんっ……は、ぁあ……っ!」
「どうした、キツイか?」
「ち……ちが……ん、ゃ……きもち、よくてっ……」
「バカ、怪我はしたくないだろ?」
「いぃ、です……ゆうきさんの、すきに……して……」
「……あんま煽んなって……」
そう呟きながら達巳の体を反転し、腰を高く掲げさせる。自分自身も切っ先に雫が浮かぶ程度には気分が昂ぶっていた。無防備な達巳の腿の間に情根を差し入れると、少し腰を使いながら目の前で指を銜え込んでひくついている蕾への愛撫を再開させる。
「ひぁ、あっ……だめ、前もは……ダメ……!」
「俺だって我慢してんだ。達巳は、我慢できねぇの?」
「ん、ぅぁ、あ、ごめん……なさい……っ……」
年下の自分に体を弄ばれ、あくまで下手に出ながら達巳が背を弓なりに反らした。すると、きゅぅうっと指をくわえた秘部が締まり、白濁がベッドを汚す。手を回して確認する指に、吐き出されたばかりの精液が絡み付いた。ごめんなさい、と身を震わせる達巳の背を指先でなぞり、わざと意地悪く囁いてやる。
「お客より先に自分が満足してどうすんだよ」
「う……すみません、がまん……できなくて……」
「俺はいいけど……それじゃ、この仕事やってけるか分かんねぇぞ?」
「…………」
「……まぁ、いいや。続けるぞ」
こく、と達巳が頷いたのを確認してから、改めてローションボトルを手にした。蓋を開けると、注ぎ口を直接達巳の蕾に押し込んだ。ビクッと跳ねて逃げようとする達巳の腰を引き戻し、ボトルに残っていたローションを全て中に注ぎ込んでしまう。
「締めて、出すの我慢しとけ」
「は……はい……っ……」
返事はするが、それは難しいのだろう。ピンク色のローションが、ひくひくと収縮を繰り返しているアヌスから零れ落ちる様は非常に淫猥だった。結城はその隙にコンドームを猛った怒張に被せてしまうと、震える達巳の腰を引き寄せローションで満たされた体内を張り詰めた先端で押し広げた。
「っ! ひ、っアッ……!!」
「やっぱキツイけど、悪いな。俺も、もう我慢できない」
「あぅ、あ……!」
たっぷりのローションでぬめる縁を指で広げながら、腰を揺らし少しずつ達巳の体を暴いていく。細い腰が身じろぐ度に華奢な体躯を壊してしまうのではないか、と不安になりつつ、狭い腸内の蠕動に導かれるように腰を進ませていった。
「ひぁ、あッ……あああ……っ……!」
「苦しいか……っ?」
藻掻くようにシーツを握り締めて悶える背中に問い掛けると、僅かな間を置いて達巳が首を横に振った。やせ我慢である事は明らかだ。けれど、達巳の中に注がれたローションは熱を持ち優しく結城の情根を包み込んでいる。中はある程度広がっており、ただ蕾の縁が精を搾り取るようにきつく締め付けてきた。そのギャップが堪らない。
「……やっぱ、全部は無理だな」
半分以上は挿入できたが、根元まで入れるには達巳の体が耐えられないだろう。結城は腰を揺らすのをやめると、はー……はー……と深い呼吸を繰り返している達巳の背を撫でた。また、小さく頷いた事が震動で伝わってくる。
「お前……よくこれで、研修合格したな……」
「……僕も、そう思います……あ……やっぱり、結城さん大きい……っ……」
「何だよ、研修担当は、もっと小さかったって?」
「……たぶん……それに、自分でする時は……指も、三本入るのに……結城さんの指は二本しか入らなかったですよね……ちょっと……甘く、みてましたっ……あ……」
「へぇ、自分ではするんだ?」
「し、します……僕も男だから溜まりますもん……ん、ぁ……まだ、うごいちゃ……っ」
動いてはいないのだが、達巳が自慰する姿を想像してしまった事で、思わず前のめりになっていた。男慣れはしていないが感じやすい体は、達巳自身が延々と快楽に耽っていた証拠なのだと思うと、男としての本能が疼く。思い切り突き上げてしまいたいのを堪えながら、ゆっくりと腰を引いていった。
「ぃやっ……! あっあぁ……ッ!」
「悪い、一回抜くわ」
言葉通りに達巳から自身を引き抜くと、こぽっと音を立ててローションが少し緩くなったアヌスから溢れた。その卑猥な光景を見ていたい気もしたが、結城もこれ以上は理性を保つのが難しい。達巳の体を反転させて腿を抱え上げると、改めて蕾に怒張を宛がう。
「ゆ……ゆぅきさん……っ」
「顔が見たい」
「……え……」
「達巳が気持ちよくなってる顔、見せろ」
見下ろしながら命令する結城に、達巳の全身がカァアッと紅潮した。それに合わせて下肢の最奥が収縮し、結城の切っ先を誘うように吸った。思いも寄らなかった刺激に、結城は再び達巳の中心を一気に貫いた。
「ひッ……あああ……ッ!!」
入る所まで押し込んでしまっても、やはり全体を銜えさせる事は難しい。だが、口いっぱいに結城を受け入れた様、今の刺激で腹に散った白濁、恍惚とした達巳の表情が眼前に並び、ズキッと下肢が痛んだ。僅かにだが張り詰めた事が分かり、達巳が艶めかしく眉根を寄せる。とろんっとした瞳は、結城ではなく何処か宙を見つめていた。
「俺の事だけ見てればいい」
顎を掴んで顔をこちらに向けさせ、腕を引っ張る。その腕を自分の首に絡ませると、結城は前屈みになり達巳と体を密着させた。
「あ……ぉく、だめ……っ……」
「無理に入れたりしねぇから。……ゆっくりする」
安心させるように頭を撫で、音も立たないくらい静かに腰を引く。緩慢とした動きで抜け落ちるギリギリまで腰を引いた後で、やはり激しく揺さぶってやりたいのを我慢しつつ腸内を再び暴いていった。
「ぁあ、あ……ッぁっ、やぁ……やだぁっ……!」
「何が嫌なんだよ……優しくしてやってんじゃねぇか」
思わずムッとして呟くと、自ら腰を擦り付けながら達巳が背に回した手に力を込めた。首を横に振り、ちがうんです、と辿々しく否定する。
「ゆ……ゆっくり、だと……あ……ぁ……あの……や……!」
「ハッキリ言え。言わなきゃ分からねぇ」
角度を変え、腹側を先端で愛撫してやると、達巳が甘い嬌声を大きく響かせた。
「あぁンッ……! あ、もっと……もっと、うごいてぇ……っ」
「だから、まだキツイからゆっくり……」
「か、かたちっ……ゆ、き……さんの……」
「は?」
「っ……かたち、が……分かって……よけぃ……っ、感じちゃうんですッ!」
真っ赤になりながら叫ぶ達巳に、理性の一角が崩れたのを結城はハッキリと認識した。
「ふあっ!?」
理性で留めていた場所から更に奥を目指し、腰付きを強引なものに変える。内蔵ごと犯すような感覚で最奥まで先端を届かせようと、何度も達巳を激しく揺さぶった。その細い腰を力任せに引き寄せ、達巳の苦しげな表情さえ楽しんでしまう。
「お前、そんなに俺を煽ってどうされたいんだよ……」
「あ、はぁっ……! あ、っぁっ、ああッ! や、やぁ……ッ……!」
「……マジで壊しちまうだろうが……っ……」
「ぁあッ! あ、ゆぅきさ……! あッあ、ぁンッ……!」
既に我を忘れているのか、喘ぎながらギュウッと膝で結城の腰を引き寄せたのも恐らく無意識だ。だが、そんな風に求められるのも悪い気はせず、背に立てられる爪の痛みも気にならない。根元までねじ込んだ情根を、やはり乱暴な動きで引き抜き、
「ッあぁあッ!」
再び荒々しく達巳を貫く。
一気に体を開かれる感覚は刺激が強すぎたか、嬌声が切羽詰まった悲鳴じみたものに変わった。はしたなく涎を垂らした唇から喘ぎを響かせ、達巳は陶酔した様子で結城にしがみ付くしかない。ただただ快感を貪る嬌態は、結城に何処かビクビクしていた達巳からは想像できないくらいの淫らさ。素直に惹かれた。
何故この体が金で買われるものなのか、と心の隅で悔しく思った。僕には僕の良さがあると思う、と言った達巳の言葉通り、その体に結城は没頭していた。人から与えられる快感に怯える体、揺さぶれば壊れそうな体。口での愛撫も、児戯同然だった。それらは自分の好みとは掛け離れているはずなのに、こうしてのめり込んでいる自分がいる。
それは間違いなく達巳の良さであり、悪さでもあった。
この達巳を、数時間後には手放さなければならない。指名はできるだろうが、その時の達巳は今の彼ではなくなっている。何人かの手を経てテクニックを身に付けた達巳を直視する事ができるか、正直自信はない。それくらいの気持ちが込み上げてくる自分自身に愕然としながらも、結城は達巳を抱き続ける事しかできなかった。
「ふ……ぁ、やッ……! あ、あ、っぁッ……も、ぃきそ……ですぅ……ッ……!」
「さっき言ったろ、何度でもイけよ……」
「っは……もっと、もっと……くださ……」
「初仕事のくせに、そう言うの何処で覚えてくんだよっ」
もうこれ以上は煽ってくれるな、と言う思いで吐き捨てるが、言われた通り最奥を勢い良く突き上げてやる。太くなった雁を前立腺の辺りに擦り付けながら、結城自身も達するために何度も無言で達巳の中を味わう。限界が近いのか、内部は激しくうねっていた。
「ひぁ、あっ! ゃっあ、あぁ……ッ!!」
「っ……んな、締め付けんな……!」
「ゃ、ゆ……ゆぅきさ……ッ……」
結城の背を抱き寄せ、達巳がようやく絶頂に至る。お互いの腹に吐精した瞬間、ビクビクと体が跳ねて結城の情欲を絞り上げた。その刺激に抗う事はできず、結城も素直にコンドームの中に射精を済ませた。
「ぁ、ふ……っ」
ローションや体液で濡れたペニスを引き抜くと、先端に精液が溜まったコンドームを外す。ベッド脇のチェストに置かれたティッシュでそれを厳重に包み、ゴミ箱に捨てた。そんな、ある意味間抜けな行為を行っていた結城を見つめ、達巳が茫然としている。
「……乱暴にして、その……」
「結城さん……」
唾液で濡れた唇を舐め、達巳がローションで濡れ閉じきれないでいる自身の蕾を指で開いてみせた。その淫乱な所作に喉を鳴らす結城に、それ、と萎えぬ情欲を見やる。
「……ここに……そのまま、入れて……出して欲しいんです……」
「いや、それは……」
完全にルール違反だ。何のために店がコンドームを持たせていると思っているのか。性病も含め、怪我の防止も兼ねた大事な商売道具のはず。それなのに、達巳は自分の中で射精してくれ、とねだる。意味が分からない。
「結城さんに……して欲しいんです……汚して、欲しいんです……」
「達巳……お前……」
どうして、そんなに俺にこだわる?
最初からそうだ。初仕事を結城なら、と言って心を決めた達巳。結城を優しいと言い、自分が求めるままにNG行為もない、と言い切った達巳。それは初仕事だから、ただひたすら頑張っているのだと思っていた。
けれど、本当にそうなのだろうか?
「結城さん、お願いします……まだ……感じたいんです……」
つぷ、と自身の蕾に指を差し入れて、そこを達巳はくちゅくちゅと弄り始める。そんな切なげな表情で誘われて断れる程、結城もできた人間ではない。
ルール違反だと分かっていながら、結城は達巳の肢体に手を伸ばした。
「共犯、だからな」
負け惜しみにも近い言葉に、達巳は嬉しそうに、うっとりと微笑んで見せた。
ともだちにシェアしよう!