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第2話の4

すると母恋は、 「春になれば薩長の軍がすぐにも攻めてくるという話やありませんか、兄さん。 そうすればどうあっても土方様達には勝ち目なんてあらしません。 そしたら兄さんにも傷がつきます。 それをどうにかしたいと思っただけです。 どんな怖い目に合うかわかりませんよって。」 「だったらなおのこと、俺でいいよ、母恋。」 自然に、口をついて出た言葉だった。 「俺はどんな目に合っても。俺は弟分のお前を怖い目に合わせたくない。」 みな驚いたように黙り込んだ。 「でも、土方様ほどのお客が取れないと、今この店は立ち行かない。 だったら、まずは、今立ち行くことを考えないと。」 「兄さん…」 しかしそう言いながら、それが自分の本心ではないことは、 双蘭も、認めたくはないが気づいている。 「兄さん、もういっぺんだけ訊きますわ。ほんまに土方さんでええのどすか? 」 あまりの母恋のしつこさに熊八は嫌な予感がしたらしく、 「太夫、母恋太夫に譲りなさったら。副長同士ということで。」 と言い出す始末だった。が、双蘭は、 「副長じゃないだろう。お奉行様なんだよ。」 本当は奉行と同格の「奉行並」という職名なのだから副長ともいえるのかもしれない。 でも双蘭はそう 言い返して本当の気持ちをごまかした。 今までになったことのない気持ちを。 「兄さん、何のぼせ上がってるのん。」

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