14 / 67
第2話の5
これが「のぼせ上がる」ように見えているのか。
双蘭には意外なことだった。
その一方で、それは何か土方の術にはまった…
というより、何か別の大きな力に導かれているような気がして、
それにとことん従ってみたい、
そんな希望が胸の奥からふつふつと湧いてくるのを、
双蘭は感じていた。
「上がられて困る客なら親方が断りを入れるっしょ。
俺はあてがわれた客を取るだけだべさ。」
双蘭にしては珍しく、地言葉で母恋に当てつけがましく言ってしまった。
それで自分でもあわてて、
「俺の方がトウが立ってるから、傷つくのも俺でいいんだ。
俺の次をボコが背負うんだから。」
と、言い訳にもならない言い訳を続けてしまった。
「それにお奉行様は俺のことを敵娼(あいかた)って言ってくれたんだし。」
それでも母恋が何か言いつのろうとするのを止める様子もない、母恋の金剛の吉次に、
双蘭は腹が立ち始めていた。
母恋の本心を利用しようという魂胆が見え見え…
でもそれは母恋がやはり土方に惹かれ始めているということで…
でも、いくら可愛い弟分の母恋でも、絶対に譲れないと双蘭は思う。
そのうちに文が出来上がり、
それを持って熊八が嘉吉のもとへ走ってからというもの、
双蘭は気が気ではなかった。
しかし、心配するほどのことはなかった。
次の夜には、土方は嘉吉だけを連れて二度目の登楼をしてくれたからである。
ともだちにシェアしよう!