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第2話の5

これが「のぼせ上がる」ように見えているのか。 双蘭には意外なことだった。 その一方で、それは何か土方の術にはまった… というより、何か別の大きな力に導かれているような気がして、 それにとことん従ってみたい、 そんな希望が胸の奥からふつふつと湧いてくるのを、 双蘭は感じていた。 「上がられて困る客なら親方が断りを入れるっしょ。 俺はあてがわれた客を取るだけだべさ。」 双蘭にしては珍しく、地言葉で母恋に当てつけがましく言ってしまった。 それで自分でもあわてて、 「俺の方がトウが立ってるから、傷つくのも俺でいいんだ。 俺の次をボコが背負うんだから。」 と、言い訳にもならない言い訳を続けてしまった。 「それにお奉行様は俺のことを敵娼(あいかた)って言ってくれたんだし。」 それでも母恋が何か言いつのろうとするのを止める様子もない、母恋の金剛の吉次に、 双蘭は腹が立ち始めていた。 母恋の本心を利用しようという魂胆が見え見え… でもそれは母恋がやはり土方に惹かれ始めているということで… でも、いくら可愛い弟分の母恋でも、絶対に譲れないと双蘭は思う。  そのうちに文が出来上がり、 それを持って熊八が嘉吉のもとへ走ってからというもの、 双蘭は気が気ではなかった。  しかし、心配するほどのことはなかった。  次の夜には、土方は嘉吉だけを連れて二度目の登楼をしてくれたからである。

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