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第2話の7
そうはさせじと双蘭は立ち上がり、
精一杯踊り始めたのだ…自分でも驚いたことに。
全く下手なのは明らかだったが、
こんな気持ちで踊るのも双蘭には初めてのことで、
何が何やらわからぬまま踊り終え、土方の脇へとまた戻った。
「良かったよ。上手いもんだ。」
そしてそっと耳元で囁かれた。
「意地を、見せてもらったな。」
それを聞いた途端、双蘭の体はカッと熱くなり、思わず面を伏せた。
客の前でこんな素の気持ちに突き動かされることも双蘭には初めてだった。
そろそろ宴がお開きになろうかという頃になっても、
土方は双蘭を離さなかった。
それは双蘭にとって嬉しいことではあったが、不安でもあった。
(…俺が…枕太夫だってこと、わかっちまったんだよな…)
先ほどの踊りの下手さ、なのに売り上げが一番ということは双蘭がどういう立場なのか、
土方にははっきりとわかってしまったことだろう。
それとも、土方のような男ならばひと目でそれを見抜いていただろうか。
だとすれば…
(…結構、好き者なのかな…)
それはそれで何となくがっかりするものがある。
とはいえ、双蘭の生まれる前からすたれてきていた陰間というものに、
二度も会いに来てくれるだけでもありがたいといえばありがたいわけで…
それくらいの男ならば少々好き者でもいたしかたないのかもしれなかった。
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