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第3話の3
悪くすると、次の日から親方は、
土方を追い詰めた新政府軍の男達を客として登楼させるかもしれない。
そして何食わぬ顔で双蘭にも母恋にもその男達の相手をさせるのだろう。
双蘭の方はもっとひどい扱いをされるかもしれない…
土方と通じた陰間として、男達の前に投げ出すとか…
いや、男達の中には土方を恨んでいる者がたくさんいるから、
殺されては困るとそこまではしないかもしれない…
でも、考えたくはないが。
そのくらいの覚悟が母恋にはできるわけがない、と双蘭は思う。
その自信が母恋に笑いで挑ませたのだ。
兎にも角にも土方と二人きりで過ごした夜があるのは自分の方なのだから…
そして、こんないさかいなど、つくづく馬鹿らしいと思う。
雪解けまでの日々、土方がどれほどの苦労を背負うかと思うと…
その時、手代がやってきて、
「越後屋さんの小僧さんがこちらを…」
と双蘭に文を差し出した。嘉吉からだった。
中身が凶事なのか吉事なのかとっさにはかりかね、
双蘭は少し不安な気持ちになった。
しかし、この文を母恋の前で開かなければいけない義理はないので、
これを口実に部屋に引き揚げることにした。
「じゃあ、母恋の太夫、そういうことで…」
らしくもなく他人行儀にそう告げると、
双蘭は熊八を引き連れて自分の部屋へと戻った。
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