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第3話の16
しかし、土方はその本心を見透かしたように、
「双蘭、諦める奴が俺は一番嫌いだ。」
と、挑むような目で双蘭を見る。
上手いな、と、双蘭は思う。
諦めなければ嫌われないかも…と思わせられる。
「…明日の朝までに頭が働くようにしておけ。
頭を働かそうとしない奴がまずは俺は嫌いだ。」
そう言って、土方はあおむけになった。が、
「双蘭、わかったのか? 」
「わかりました。」
双蘭ははっきりと答えた。
土方とこれから未来に向かって一緒に何かを始められるようで、
何だか嬉しかったのだ…
いや、胸の奥底には…もちろん禍々しい予感はあるのだが。
でも、双蘭はそんな縁起の悪いことは考えたくなかった。
それに…刀傷があるとはいえこんな美しい、愛しい体が戦場で苛まれ、損なわれていくことなど…
土方のすべての災厄など考えたくなかったのだ。
「双蘭、寒い。」
双蘭がそんなことを考えていると、
土方に、不満げな、でも冗談めいた口調で言われた。
双蘭はこれ幸いと土方の上に覆いかぶさる…
土方の腕が双蘭の背に回る。
「…朝までこの調子で温めてくれ…」
耳元の、その囁きだけで双蘭は感じてしまう。
愛しくて、たまらない。
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