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第4話の1
土方の登楼の後の日々は、あっという間に過ぎていったが…
恥ずかしい話だが、あの時、土方の背を見送ったあとの玄関に座り込んで、
涙が止まらなくなって以来、双蘭はどうも頭の調子も体の調子もすっきりしなかった。
涙は自然と涸れた。
街も騒がしくなり、店にはさっぱり客も来ないからいいようなものの、
今日も双蘭は粗末で暗い控え部屋で、壁にもたれて座りながら、
土方のことばかりを考えてしまう。
他の抱え子たちがばたばたしていてもまったく気にはならない…
…最後に目が合った時の土方の瞳の色は、
前の夜の睦言…というより、説教の時のような優しさをたたえていたと思う。
弟分でも見るような…
祝儀を渡してくれた時の冷やかさとは別人だった。
言いたげだった言葉も察しがつくような気がする。
<からだをいとえ…>
だったのではないだろうか…
だとしたら…
(お奉行様は本当は私の思いを受け止めてくださっていたのかもしれない…)
だからといって、土方の方も自分に心を寄せてくれたとは思えないし、
自分との出会いが、あの方を引き留めるよすがになろうはずもなく…
(…次来るときにはアシがない、か…)
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