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第4話の6
すると、そんな双蘭の胸の内を読んだように、親方はこんなことを言い出した。
「特に、お前のお奉行さまは行方知れずだそうだ。
部下たちと奥地に向かったという話もあれば、
一人だけで密かに内地に...江戸の近くの実家を目指したという噂もある..。
そこで兵士を募ったこともあるそうだから…」
熊八と吉次は後ろに控えているので、表情は見えない。
しかし、内地、と出たところで、双蘭は嘘を感じた。
二人の気配もあったかもしれない。
内地になんてどうしてあの方が帰られるだろう。
それも一人で。江戸までどうやって…
もう内地には敵しかいないというのに。
実家はたいそうな金持ちと噂に聞いたが、
逆賊になった身内などかばえるものだろうか。
何より門前払いではないのだろうか…
ふと、小姓の市村のことを思い出し、あの人ならばまだお仕えしているかもしれないとも思ったが…
二人連れとはあんまりで…それを土方が選ぶとは思えない。
もう親方の口からも本当のことは聞けないと、双蘭は諦めた。
頭の中がごちゃごちゃになって、もう何もわからなかった。
「越後屋さんもウチと同じ心づもりだろうが、
嘉吉さんは江戸…じゃなかった…どうも言いづらくていけない…その…東京に移されたそうだから。」
双蘭は驚いてまた目を上げたが、親方はすっかり落ち着きを取り戻していた。
「お客様以外の人間には一切会うな。まあそういうことだ。
控え部屋に戻っていいぞ。」
はい、と答えて双蘭は親方の部屋を出ると、熊八に連れられ、いつもの控え部屋に戻った。
しかし…
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