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第4話の11

「…待ちわびていた薩摩の方々は、 女のようななりで紅おしろいをつけた男というのは全く気に入らないらしい。 なよなよしたのも気にいらないし、女の客を取っているというのもわからない、と…」 …と、親方は頭を抱える。 後からやってきた熊八と吉次はそれぞれ、 「その一方で、やっぱり、これまでのお客様は、 これまで通りきれいな方がいいと、男も女もおっしゃるんで。」 「いや...私には備前屋のおかみさんは...その... 太夫お二人はもうそろそろ女のなりは...とおっしゃって...」 双蘭と母恋は真っ青になって顔を見合わせた。 確かに男相手にはとうが立ってきているかとは自分たちでも思っていたが、 女相手でもそう言われるとは… 親方も困り切った顔だった。 が、しかし、しばし考えると、 「いや、でもやっぱりこれまでのまま続けるしかあるまい。 もう東京にもない商売なのだから、名物になるよう磨くことにしよう…」 しかし、そうはいってもみんなが黙り込んでしまった… その中で、母恋が口火を切った。

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