60 / 67

第4話の13

 その後は仕方なく、陰間たちは当分は松葉楼の女たちの用心棒の見習いということにされた。 「女郎なら、まだ開けてない奥地の店にでも鞍替えさせられるのに…」 と親方に嫌味を言われながらも、 双蘭も他の抱え子たちと同じように双吉と名をあらため、 髷も落として…西洋風のざんぎり頭に男のなりで働くことになった。 親方たちも気の毒だが、抱え子たちの方がもっと大変だった。 男の仕事など何一つわからないのだから…  そのうち、元陰間は双吉と、母恋改め順吉だけになった。  あとの子たちは、親方の口利きで、函館からはるか離れた奥地の川や橋の工事へと送られていったのだ。  これまで自分たちの世話をしてくれていた熊八や吉次は、 立場が入れ替わって兄貴分になっていたが、松葉楼では新入りなので立場が弱く、 それで相変わらず双吉たちに優しかったが、その彼らが言うには、 親方に売られた時、親たちに払った身代金が返せていた、 つまり親方に借金がなかったのは売れっ子の双吉と順吉だけだったのでは、 ということだった。 「じゃあ、輪西たちは…」 その先は吉次も答えてはくれなかった。

ともだちにシェアしよう!