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第5話※
大友の瞳が悲しげに揺れた。
「一人目の犠牲者が、俺のダチだった」
ポツリと大友が言った。
目を向けると、泣きそうな顔をしている大友がいた。それを隠すように額に手を置くと、少し震えているようにも見えた。
「びっくりしたよ。まさかあいつにそんな性癖があったなんて……別にゲイってわけでもなかったし」
「ゲイをカミングアウトする人なんて、そういませんよ。仲が良かったら尚更言えないんじゃないんですか?」
そんな事もわからない大友の鈍さに苛立ちを感じた。
「そう、だよな」
「それに、女装癖があるからゲイってわけでもないし」
「おまえはどうなんだ?」
「俺はゲイですよ」
隠しているのもバカらしく感じ、開き直ったように弥艶は言い放つと、大友は面食らったように弥艶の言葉に目を丸くしている。
「その人も、別の自分になりたい願望があったのかもしれませんね」
「あんたも別の人間になりたかったのか?」
弥艶はその質問に答える事はしなかった。だが、その沈黙が認めていると言っているようなものだった。
不意に、大友は弥艶の肩口に頭を乗せ甘えるように額を擦り寄せてきた。
ドキリと大きく心臓が鳴る。
「ちょ、ちょっと!」
体をよじると、
「少しだけ……こうさせてくれ……」
今までの余裕のある飄々とした大友はどこにもなかった。無意識に弥艶の手が大友の短い髪を撫でた。その手を大友に掴まれると、大友の顔が近づいてきた。
「大友さ……」
次の瞬間、唇を塞がれていた。
歯列を割って大友の舌が弥艶の口内に侵入してくる。
「んっ……!」
弥艶の逃げる舌を追い、その舌を捉えるとしつこく舌を絡みつけ、大友の大きな掌が弥艶の太ももを撫で回している。弥艶はそれ以上の手の侵入を制する為、力の入らない手で必死に大友の手を掴んだ。
「んっ……んっ……はぁ……」
やっと唇が離れたと思うと、舌先から銀色の糸がいやらしく光った。
「わかってます?あなたは男にキスしたんですよ」
そう言うと大友はハッとしたように、弥艶から体を離した。
「そうだった、あんたは男だった」
「残念でした」
弥艶はそう言って目の前にあるワインに口を付けた。
「なぁ、口でしてくれねーか」
大友の言葉に弥艶はワインを吹き出しそうになった。
「な、何言って……!」
無意識に大友の股間に目を落とすと、スラックス越しからも分かる程、大友の中心が膨らんでいた。
顔を引き寄せられ、
「その色っぽい口で、舐めて欲しい……」
低い声でそう耳元で囁かれた。
どくんっと弥艶の心臓が鳴り、腰がズクズクと疼いた。
弥艶は抵抗する事を忘れ、大友のベルトを外した。スラックスのファスナーを下ろすと、黒いボクサーパンツ越しにもその大きさがわかる。そっとそれを撫でると、ピクリと大友の体が揺れた。下着をずらし、いきり立った大友の中心が露わになると、弥艶はその大きさにゾクリと小さく震えた。
最初は舌先で舐め上げては窪みを突いた。
「……っ」
大友が感じているが分かると、堪らずそれを口に含んだ。口の中で軽く吸いつつストロークを繰り返し、時折裏スジを舐め、先に吸い付いた。先が弱いらしく、そこを攻めるとビクビクと大友の体が震えた。
不意に頭を掴まれ、強く頭を押さえ込まれると喉の奥まで当たり、うっ……と小さく呻いた。
「出る……」
次の瞬間、喉の奥に大友と吐精したものがあたった。全て出し尽くしたのか、大友の手が緩まり弥艶は解放される。
ゴクリと弥艶はそれを全て飲み干し、弥艶の口の端から大友が出した精液が流れ、それをペロリと舌で舐め上げた。
「参ったね……」
大友は弥艶のその一連の動きを目の当たりにすると、苦笑を浮かべた。
二人はその後も淡々と飲み続け、弥艶はいつの間に眠ってしまっていた。
次の日、目覚めるとベットにいた。酔いつぶれた自分を大友が寝室まで運んでくれたのだろう。大友の姿はなくテーブルにメモが置いてあった。
『近いうち連絡する。酒ごちそうさま』
書き殴ったような字でそう書かれていた。
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