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第4話
「それより、こんなところでこんな話題して大丈夫なの? 誰かに聞かれるとまずいんじゃないの?」
レイの言葉にリチャードは黙り込む。確かにその通りだ。気まずい空気が二人の間に流れる。
と、その時ドアが開いてスペンサー警部がブルック巡査を引き連れて入ってきた。スペンサーはレイの姿を見て、ホッとした顔をする。
「レイモンドくん、もう来てくれたのか。助かるよ。後で、チームと一緒にミーティングに参加してくれ。……その前に、再研修のブルック巡査から挨拶があるから、チーム全員ちょっと集まってくれ」
スペンサー警部の後ろに立っていたサーシャは、リチャードの側に寄りそうように立っているレイを見付けて、何か思ったらしく、ジロジロと遠慮の無い目で彼を見つめた。レイはそんな無遠慮な態度に苛ついた表情を浮かべる。
「ブルック巡査?」
黙りこくっていたサーシャを見て、スペンサー警部が声をかける。
「あ、はい。今日から1年間再研修でまたお世話になります。よろしくお願いします」
いつものように愛想の良い表情でサーシャは挨拶をする。そして、リチャードの方をおもむろに向くと「特にジョーンズ警部補、よろしくお願いしますね」と媚びた声で付け加えた。
「うぐっ」
リチャードは思わず言葉にならない声を上げる。
――レイがいるところで、勘弁してくれ……
気になってレイの表情を伺うと、彼はまるでブリザードが吹きすさぶ南極大陸のような冷たい目付きで、サーシャを睨み付けていた。
「それじゃ、仕事に戻ってくれ。ブルック巡査はちょっと私の部屋へ。レイモンドくんはもう少し待っててくれないか? ブルック巡査の話が終わったら、チームミーティングをするから」
「分かりました」
レイはそう言うと「リチャード、話の続きだけど」とわざとサーシャに聞こえるように言って、リチャードを引っ張りデスクへ向かう。
ふと気になって、リチャードがサーシャを見やると、彼女はレイに敵意剥き出しの視線を投げかけて、スペンサー警部の部屋へ入っていった。
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