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第14話

 右手には別の入り口があって、多分ここの部屋が展示室になっているのだろう。左手には目隠し用の衝立が置かれており、関係者以外立ち入り禁止、と紙が貼られている。どうやら小さなキッチンとトイレがあるようだ。  その衝立の手前に狭い階段があり、どうやらそこから上の階へ移動出来るようになっているようだった。 「ところで、博士と奥様にお話を伺いたいのですが。勿論あなたにもです。像が盗難にあった時の様子を知りたいので、当時の状況をお話頂けますか?」 「博士と奥様は上の階のリヴィングにいます。この博物館は地上階、一階が博物館で、二階、三階は博士と奥様の住居になっています。早速、上の階にお連れしますね」  エリックは先に案内にたって狭い階段を昇っていく。少し歪んだ木製の階段は、ぎしぎしと頼りない音を立てた。リチャードは4人も一度に昇って大丈夫だろうか、と一瞬心配になる。  展示室になっているという一階を過ぎ、博士の私室がある二階まで上がる。  二階にはリヴィング、キッチンと博士の寝室、書斎がある、とエリックが説明してくれる。 「奥様とは寝室が別なのですか?」 「はい。奥様は三階のお部屋でお休みになられます。あと三階には奥様の弟さんが使われている部屋と物置があります」  夫婦で別寝室というのは英国では珍しくはない。特に富裕層ではそう言った傾向が強い事をリチャードもよく知っていた。だが、このように金に余裕があるとは思えないような状況の場合は少し変ではないだろうか? と彼は疑問に思う。  二階まで上がり、エリックが一番手前のドアをノックする。中からどうぞ、とかすれた声がして、エリックがドアを開けた。 「ウィルソン博士、警察から捜査の方がお見えです」 「そうか、入って貰ってくれ」  エリックはリチャード達に部屋に入るように促す。部屋の中はそれほど広くなく、やはりここもあまりお金を掛けていないのが一見してすぐに分かった。  古ぼけたグリーンのソファセット、真ん中にはローテーブルが置かれているが、二十年ほど前に流行ったタイプの物だ。全体的に薄暗く、時代から取り残されたような部屋だった。  そのソファに痩せて白髪が目立つ小さな老人がちょこん、と座っている。まるでおとぎ話に出てきそうな人物だ。時代物のツイードのスーツを着ているが、どちらかというと彼がスーツに着られている感が強い。彼がこの博物館の館長、ジョージ・ウィルソン氏らしい。  そしてその隣にはけばけばしい化粧をした、プラチナブロンドの女性が偉そうな態度でソファに座っていた。彼女が妻のアビゲイルなのだろう。

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