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第17話

「博物館に外部から侵入した形跡はありませんでしたか?」 「いえ。正面玄関は中から鍵が掛かったままでした。裏口は僕が自分の鍵で開けるまで、閉まったままでこじ開けたような痕もありませんでしたし、館内の窓ガラスも異変があるようなところは一カ所も……」 「そうですか。犯人は合い鍵でも作っていたのかな……?」  リチャードは思わず独り言を呟く。何とも分かりにくい事件だ。 「ところで、お話していなかったんですが、実はこんな物を受け取っていまして……」  エリックがポケットから一枚の紙を取り出し、リチャードに渡す。  リチャードはそれを受け取り開いてみた。  それは普通の白いプリンタ用紙で『回転するエジプト像は呪われている。今すぐ手放さなければ博物館は災いに見舞われるだろう』とタイプされていた。 「これ、いつ来たんですか?」  今まで一言も口を開かなかったレイが尋ねる。その口調は素っ気なくて、少し冷たく感じた。 「あの……五日ほど前の事です」  レイの冷たい態度に気圧されたかのように、今まで堂々と受け答えしていたエリックが突然口ごもって答える。 「ふうん。何でこれ受け取った時、すぐに警察に連絡しなかったんですか?」  レイは鋭い視線をエリックに真っ直ぐ投げて問いかける。なまじ綺麗な顔をしているだけに、こういう表情で問い詰められると迫力が違う。 「いえ……あの、たちの悪いイタズラだと思って……それで博士にも言わずに、机の引き出しの中にしまったままにしてました」  エリックはレイの視線に耐えきれず俯きながらそう答える。  博士はそんなものがあったのか、と少し驚いた表情で黙ってやり取りを聞いている。だが、相変わらずどこか焦点が合わないようなぼんやりとした顔付きで、リチャードは本当に彼はきちんと話を聞いているのか不安になる。 「私ね、知ってるのよ」  今まで黙って話を聞いていたアビゲイルが、突然口を開いた。 「あれはね、やっぱり呪われた像だったのよ」  妙に甲高くて勘に障る声だった。リチャードは思わず眉を顰める。 「あんなの早く手放せば良かったのよ。自分で動くなんて気持ち悪いったらないわ。きっと呪いで消えちゃったのね」

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