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第21話

「ねえ、リチャード、鑑識が作業終わったみたいだから、あのケースの中見せて貰ってもいい?」  予想に反してレイはサーシャに何も言い返す事なく、淡々とリチャードに問いかける。 「ああ、構わないよ」  リチャードもケース内を見たいと思っていたので、レイと一緒に展示ケースの中を覗いてみる。エリックとサーシャは離れた場所で二人の様子を見ている。サーシャはレイになるべく近寄りたくないようだった。 「……この中、鑑識チェック入れてる?」 「その筈だけど」 「埃っぽいよね……全然掃除してないみたい」  レイが言う通り、ガラスケースの中はお世辞にも綺麗とは言えなかった。もう何年もきちんと掃除していないようで、埃が目立つ。よくこれで展示を続けていたものだ、とリチャードは驚いていた。 「まあ、お金ないみたいだし、掃除の人も雇えないぐらいだから、仕方ないのかもね」  レイはそう言って、ざっと中を見終えると立ち上がった。そして部屋の真ん中に置かれている展示ケースに興味を持ったようで、しきりにケースの周りを見回している。  部屋の中央には独立した小さめのガラスの展示台があり、ガラスケース本体は縦が五十センチ、奥行きが一メートル程度、幅は二メートル程の物で、その下には高さ五十センチほどのマホガニーを使った木製の台が置かれていた。台はテーブル状になっているので、下には空間がある。その展示台がレイは気になるらしく、しきりと下を覗いたり、台から見える風景を確認したりしていた。  そしてふと斜め上に視線をやった時にレイは何かに気付いて立ち上がり、じっと天井付近を見つめている。 「レイ、どうした?」 「あれ見て」  レイの視線の先には、監視カメラのような物があった。 「エリックさん」 「はい」 「あれは監視カメラですか?」 「あ、ええ。そうです」 「盗難に気付いてから、映像のチェックはしましたか?」 「いえ……監視カメラの存在を忘れていました」  エリックは申し訳なさそうに返答する。  もしもカメラの映像に犯人の姿が映っていれば、一気に事件は解決だ。リチャードは何故もっと早く気付かなかったんだ、と臍を噛んだ。 「あのカメラの映像を見せて下さい」 「分かりました」

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