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第22話
結果的に言うと、カメラの映像には何も決定的な瞬間は映ってはいなかった。
「……どういう事だ……」
リチャードは映像を見ながら途方に暮れていた。
閉館後、エリックが像を持ち帰って来て、ガラスケースに入れるところから、今朝彼が出勤してきて、部屋を掃除中に像が無くなっているのを見つけてから博士を呼びに行き、一緒にガラスケースを開けるところまでを早送りで見たが、その間犯人はおろか、怪しい人影の一つすら映っていない。
ただ、リチャードは監視カメラがあまりにも旧式すぎて、画像が非常に悪いのが気になった。モノクロームで画面が粗く、よく目を凝らさないと詳しいところまでよく見えない。もしかすると、何か見逃しているかもしれない。
「この映像、USBに落とさせて貰っていいですか?」
レイが尋ねるとエリックは「いいですよ」と快く承諾した。レイはポケットからUSBスティックを取り出すとエリックに渡す。彼は手際よくダウンロードしてレイに渡す。
「博士はあまりこういう機材には、気を掛けておられないんですね」
リチャードが尋ねると、エリックは苦笑して答える。
「お金がありませんから……本来ならこういった機材にこそ、お金を掛けるべきなのでしょうけれど……この監視カメラも十年以上使ってるんですよ。よくまだ動いているな、と言いたくなる代物です」
エリックは少し悔しそうにそう言う。余程、台所事情が苦しいようだ。
レイはUSBスティックを弄びながら、エリックに質問をする。
「エリックさん、このカメラの映像はどれくらい保存されているんですか?」
「二十四時間ごとに映像が上書きされるような設定にしてあります。そもそも、ここの博物館が犯罪の対象になるなんて、思いもしていませんでしたから……そんなに長く映像を取っておく必要もありませんでしたし……」
「そうですか、分かりました。リチャード、もうここで見るものは何もないと思うよ。署に戻ろう」
レイはそう言って椅子から立ち上がる。リチャードはレイの後ろから覗き込むようにしてパソコンの画面を見ていたが、レイにそう言われて「そうしよう」と同意する。二人は衝立の陰から出る。
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