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第27話
翌朝、リチャードはスペンサーに指示され、出勤前にホワイトキャッスル・ギャラリーに寄ってレイをピックアップした。彼はこの日は珍しく薄いグレーのシャツにブラックの細身のコットンパンツを合わせて、上には黒いコットンカシミア素材のカーディガンを羽織っていた。
彼は少し元気がないように見えたが、それは前日に思いがけず彼の本心をリチャードに吐露してしまった事が原因のようだった。
レイは助手席にいつものように乗ると「おはよ」と呟くように言って、窓の外に目をやる。
リチャードには分かっていた。レイは恥ずかしいのだ。彼はいつも自分の本心を上手く隠している。だが彼は、誰にも知られたくなかった自分の気持ちを、抑えが利かずにリチャードに話してしまった。その事が彼の態度に表れているように思えた。
「今日は白シャツじゃないんだね」
リチャードは運転しながら、ちらりと横目で見やってそう言うと「うん、今日はギャラリー勤務じゃないから」と答えた。
彼はいつもギャラリーにいる時は、白いシャツとブラックジーンズを必ずと言っていいほど着用している。彼にとってはユニフォームみたいなものなんだな、とリチャードは思った。
「似合ってるよ」
「ん?」
「たまには違う服、着ればいいのに。いつも白シャツにブラックジーンズだろう?」
「毎日毎日、何着ようって考えるのが面倒なんだ」
「そういうもん?」
「リチャードだって、いつも出勤の時はスーツだろ?」
「まあ、そうだよな。スーツなら何も考えなくていいから楽と言えば、楽だな」
「それと一緒だよ」
そんな他愛のない会話をしている内に、METの庁舎に着く。二人は地下駐車場からリフトを使って三階のAACUのスタッフルームへ上がる。
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