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第33話

「確かに動機の面から見ると、彼女が一番怪しいな。だが、その場合どうやって像を盗んだのかが全く分からない。レイモンドくん、あの発光現象と盗難は関連しているのかい?」  スペンサーはサーシャの意見に同意を示しながらも、納得いかないようにレイに尋ねる。レイはスペンサーの言葉を聞いて、頷きながら答えた。 「あの発光現象と像が消えた事には密接な関係があります。でもその前に一つだけ。この事件には関係者が二人います。一人は脅迫状を送った人間。そしてもう一人は像を盗んだ犯人です」  レイの言葉に、全員が驚きの表情を浮かべる。 「どういうことだ? 脅迫状と像を盗んだ犯人は別なのか?」  リチャードは混乱していた。てっきり彼は脅迫状を送った人間が、像を盗んだとばかり思っていたのだ。 「別人の仕業だよ。同一人物だと思うから、この事件が複雑に見えてしまうんだ。でもこれが別々の人間の仕業だと分かれば、後は自然に絡んだ糸が解けるんだよ」 「じゃあ、一体誰が脅迫状を送ったんだ?」 「これはブルック巡査の当てずっぽうが当たってるんだ」 「あ、当てずっぽうとは何よ! 失礼な事言わないでくれる?!」  サーシャはレイに向かって怒鳴った。 「まあ、まあ、落ち着いて。レイの話を最後まで聞いて」  リチャードはサーシャをなだめる。彼女はリチャードの言う事ならば素直に聞いた。何か続けて言おうとして一旦口を開いたが、リチャードの言葉を聞いて口を閉じる。 「脅迫状を送ったのはアビゲイルだよ」 「アビゲイルが? でも何で……」 「リチャード、思い出して。あのエジプト像を手放したがっていたのは誰?」 「アビゲイル……そうか、あの脅迫状を使って博士を説得しようとしたのか」 「そう。あの脅迫状には『今すぐ像を手放せ』という内容の事が書かれてた。さもなくば、博物館に災いが降りかかる、とも。あの博物館を誰よりも愛しているのは博士だ。像を手放さなければ博物館に何かが起る、だからあの像は売ってしまえ、とアビゲイルは博士に迫るつもりだったんだ」 「ところが、当てが外れたのか……」 「そう。手紙に気付いたのはエリック一人で、それを博士に見せることなく彼はデスクの引き出しに入れっぱなしにしてた。だから博士はまったく脅迫状の存在を知らなかったし、アビゲイルはアビゲイルで早く金の都合を付けたかったから、焦っていたんだ」 「でも、どうしてそんなにアビゲイルは焦る必要があったの?」  セーラが疑問を呈する。 「アビゲイルが博士と結婚したのは間違いなく財産目当てだった。ところが肝心の博士の資産は博物館の運営の為に逼迫していて、思ったよりも自分が使える金が少ないことに不満を感じていたんだ。そして追い打ちをかけたのが、後援者だったカーマイケル卿の死だ。頼みの綱のカーマイケル卿の庇護がなくなって、ますます手元の小遣いに困るようになった」

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