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第34話

「どういうことだ? カーマイケル卿の庇護って、アビゲイルと彼は何か関係があったのか?」 「ここからは推測に過ぎないんだけど、多分アビゲイルとカーマイケル卿は元々愛人関係にあったんだと思う。ところがカーマイケル卿の方でアビゲイルを囲えない事情が出来た。家族にバレて反発をくらったとか、そういう理由じゃないかと思うけど。それで卿は別れようとしたが、アビゲイルの方は簡単に頷くような玉じゃなかったんだ。そこで困り果てたカーマイケル卿が頼ったのが古くからの知り合いだったウィルソン博士だったんじゃないかな。彼は都合がいいことに独身だったし、周りに文句を言うような家族もいなかった。だからカーマイケル卿は、博物館の支援の存続と引き替えにアビゲイルの世話を見て貰う事にしたんだと思う。カーマイケル卿はもう亡くなっているし、ウィルソン博士にしても恩人の事だから、尋ねたところでどこまで本当の事情を話してくれるかは分からないけど、そんなところだろうと思うよ」 「……だから、カーマイケル卿のチャリティパーティに、どう考えても相応しくないアビゲイルが出席していたのか」 「そう。カーマイケル卿が連れて来ていたんだよ。ウィルソン博士との出会いの場を演出するためにね。大体博士は学問一筋で色恋沙汰とは無縁のような人物だよ。そんな人がいきなりあんな女性と結婚すると思う? 絶対に何か裏があるに違いない、って思うのが普通だろう? ウィルソン博士にしてみたら、資金面で世話になっている人の頼み事だ。断れないに決まってる」  リチャードは博物館で会ったアビゲイルを思い出していた。どう見てもあの真面目一辺倒の博士とは釣り合わない、と疑問に思ったのだ。その疑問がみるみるうちにレイの説明で氷塊していく。 「リチャードとブルック巡査は、エリックさんが家の間取りの説明をしたのを覚えてる?」 「ああ、博士とアビゲイルは別々の寝室だったな。俺もその点はおかしいと思っていたんだ」 「上流階級が住むマナーハウスなら分かるけど、あんな都会のど真ん中の狭いタウンハウスで別々の寝室なんてあり得ないよ。しかもアビゲイルはジミーと隣り合わせの部屋だ」 「それが、何か問題があるの?」  サーシャが不思議そうに尋ねる。

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