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第39話
「きっと博物館の中のどこかにあるんだと思う。エリックはあの像を一時的にでも、アビゲイルとジミーから守るために隠す必要があった。だけど、ただあの展示ケースから取りだして隠したのでは、エリックがやったことだとすぐにバレるだろう? そうなればアビゲイルは絶対博士を直接説得して、像を売却させるに違いない。下手すればエリックを解雇しろ、と言うかもしれない。エリックとしてはそれは絶対に避けなければならない結果だったから、こんなシナリオを考え出したんだと思うよ。上手くいけばアビゲイルに罪を着せられるかもしれないしね。あの脅迫状の件もあるから」
「まさかあの場面で脅迫状を俺たちに渡すとは思ってなかっただろうから、アビゲイルも慌てただろうな……だからやたら呪いがどうのとか騒いでたのか。騒ぐことで自分から嫌疑の目を逸らそうとして」
「そういうこと」
説明されてしまえば単純すぎて、なんだそんなことだったのか、と思うが、同じ材料を目にしていながら、レイ以外誰一人として真相に気が付かなかったのだ。
リチャードは改めてレイが何故、警視総監やスペンサー警部から高く評価されるのかを再認識した。
「リチャードはセーラと、クライブはブルック巡査を連れて博物館まで行ってくれ。アビゲイルとジミー、それからエリックの身柄を確保、署まで連行するように。パトリックは博物館内の捜索と警備のバックアップを依頼してくれ」
スペンサーから指示を出されて、全員椅子から立ち上がる。
リチャードは一瞬レイの事が気になって彼を見た。
「大丈夫、自分一人でギャラリーまで戻れるよ。子供じゃないし」
「……そうしてくれると、助かるよ」
セーラとクライブ、サーシャはすでに部屋を出て、地下駐車場へ向かっていた。スペンサーも自室へ戻っている。パトリックは自分のデスクの電話で、他の部署に博物館内の捜索のバックアップを依頼している最中だった。
その様子を見て、レイがリチャードの耳元に口を寄せる。
「今日、うちのギャラリーでオープニングパーティあるんだけど、リチャード来てくれるよね?」
「……いいけど?」
これまでに何度もレイのギャラリーのパーティには呼ばれているのに、何故こんな秘密めいた態度で誘うのか、彼の真意が読めず、リチャードは戸惑う。
「……明日のオフ、そのまま取れそう?」
「……ああ、事件が解決したから、大丈夫だと思う。参考人聴取なんかはセーラに任せられるし、書類仕事はそんなに急がないから……」
「じゃあ、夜はゆっくり出来るよね?」
「……?」
「仕事終わったらギャラリーに来てね。待ってるから」
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