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1 事後報告は恋のはじまり!?③
………アァ
そうさ、俺は愛されてしまったんだ。
この無茶苦茶な人に。
母の再婚相手は天見会組長。
俺は、その筋の人になってしまった。
困惑する俺に手を差し伸べてくれたのが、藤弥 さんだった。
甲斐甲斐しく世話してくれて、俺と遊んで勉強も教えてくれた。
誕生日には、お料理苦手な癖に……藤弥さん、手作りのホットケーキを焼いてくれた。
3段重ねの豪華版★
メープルシロップとホイップと果物いっぱいで、パフェかと思っちゃった。
ひとりぼっちのこの世界で……
俺は、迷わずその手を握っていた。
幼かった俺は……
暖かな手の向こうで、クルクルと……
木漏れ日が踊っていた。鮮やかな新緑が輪を描いて踊っていたんだ。
ぎゅっと握った。
あなたの温もり……
その手の持ち主こそ!
組長が引退し、新たな組長の座に就いたその人は、天見会正統なる後継者
天見 藤弥
現会長の長男で、再婚で俺の兄となった……その人だった。
その手は今!
「愛している、佑都」
俺の頬を包んで。逃げる事は許さない。
顔を背ける事さえ許されない。
「当然だ。お前は私だけを見ていればいい」
天見会を株式会社 化し、社長と呼ばれる彼は、天見会十代目。
裏社会の頂点に立つ男なのである。
「違うね。お前の前では、弟を一途に愛する『藤弥お兄様』だよ」
チュウウゥゥゥゥ~~💋
さんそ、さんそー!!
星が回る。
思考が霞んでいく。闇に落ちる。
「私の腕に墜ちなさい。一生可愛がってあげよう」
(イヤァァァーッ!!)
人間、窮地に陥ると生きるための起死回生!とんでもない力が出るんだ。
俺から酸素を奪い尽くす端整な唇を引き剥がす。
「兄はァァァッ!」
弟と、
「ちゅちゅちゅ」
「チュー……つまりキスだね」
そう、それ!
(兄弟でキキキ、キスは……)
「しない!」
「するよ!」
真っ向から全否定されたーッ★
「只のキスじゃない……」
……と仰いますと?
(いや!)
やめてくれ。
その先聞きたくない。
ゾゾゾゾー
背筋を這い上がる悪寒が警鐘を鳴らす。
これ以上踏み込むな!
耳を傾けるな!
耳を塞げとー!
「恥ずかしがり屋だな。私の声だけでイキそうなのか?」
「んなわけあるかーッ!」
「うん、しっかり聞こえているね」
怒りの余り、耳を塞いでいた手をはずしてしまったじゃないかーッ
振り下ろした拳は敢えなく、社長に捕らえられる。
腐っても組長
易々と拳は当たらない。
「反抗期のお前を躾るのも悪くない」
「ナァッ」
俺、二十歳はとっくに過ぎた。
「いつまでも、少し手のかかるヤンチャで可愛い弟だよ」
烏色の闇が翼を広げる。
瞳の中に囚われる。
可愛いお前……
「最愛の弟に捧げるキスは、ディープだよ!!💋」
「せんわー!!」
「する」
ブチュウゥゥゥ~~💋♥
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