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4 そんなの、ほんとうに!!②
「ハフンっ」
有能秘書がお尻を撫で回すから、変な声出ちゃったじゃないか。
「な……ァフう~」
「ほら、もっと鳴きなさい」
佐伯の手が追い詰める。
身をよじろうとも追ってくる。
逃げようにも狭い車内だ。
否、リムジンだから一般車両よりは十分広い。
しかし。
佐伯の体躯が俺の上にのし掛かる。
男二人で、どうしたってここは狭い。
「ハフ」
お尻を撫でられて、腰が振れてしまう。
(か、感じてるんじゃないからなっ)
俺は、お尻なんかで感じたりしない。
「ほんとうに?」
「フーフー」
「気持ちいいこと、大好きなくせに」
「ちがぁ~フーフー」
「喘ぎ声がまんして……可愛いですね」
「ウヒっ」
「ほら、可愛い声が出た」
「ちがッ……フーフー」
どこが可愛いんだ!
こんな変態じみた声。
お前の手から逃げようとして、当たったからビックリしたんだッ
「なにに?」
「………………えっ」
薄いレンズの向こう、闇色の双眼が見つめる。
「なにに当たったんですか?」
………………佐伯?
「答えてください。私のなにに当たったんですか?」
「そんなのッ!」
言える訳ない。
それは!
ソコは!
お前の……
あなたの……
大事な場所
大事な雄
(硬くなって膨らんでいる!!)
チラリと流した視線に映る。
おズボン、パンパンじゃないか★
元々のサイズ大きいのに、なぜ。
よりにもよって。
キュッとしまったスラックスをはくんだァァッ
優雅な手付きで、指先が縁のない眼鏡を押し上げた。
「通常サイズでも股ぐらがキツイです」
「履き心地は聞いとらんわァァァーッ」
俺が聞きたいのは、そう!
なぜリムジンに、それも運転手として有能秘書・佐伯……もとい★
天見会組長・天見藤弥が乗っているんだァァァーッ!!
「社長だよ」
指先に眼鏡の薄い光がひらめいた。
レンズのない漆黒の双眼が俺を映す。
闇色の瞳の底に囚われる。
「私が、お前を独りにさせるとでも思ったか」
まるでマジックでも見ているように……
先程まで眼鏡を持っていた指先が、一枚の紙を挟んでいた。
航空券だ。
「私も行くよ」
お前とミラノへ
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