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第4話
「あら、こんなハンサムさんを一人にしておくなんて、このパーティの客も大した事ないわねえ」
ふいに声を掛けられて、視線を上げると、ボブの髪の毛をピンクに染めた女性が、目の前に立っていた。
「こんばんは、ハンサムさん」
「ああ、どうも……こんばんは」
「あなたアート関係の人じゃないでしょ? 何だか場慣れしてないもの」
「ええ、まあ……そうなんです。よく分かりましたね」
リチャードはどう答えていいのか分からず、しどろもどろになりながら何とか会話を続ける。目の前のピンクの髪の女性は、グラマラスな体をブラックのミニドレスに包んで、耳には大きな輪っかのピアスをぶら下げていた。そんな彼女の容姿を見ただけで、リチャードは圧倒されてしまう。普段彼が会うことがないタイプの女性だ。
「こんな素敵なスーツ姿の男性に、レイのパーティでお目にかかれるなんて光栄だわ。このパーティはどなたの紹介でいらしたのかしら?」
「レイの招待です……その、彼の同僚なんで」
「同僚? アートディーラーなの?」
「いえ、警察官です」
「警察官? 道理で。あなたお堅い感じだもの。レイが警察の仕事のお手伝いしてる、って聞いたことあったけど、まさかあなたみたいな人とお仕事してるなんて、意外だったわ」
女性はリチャードの胸に手を当てる。
「スーツで隠れてるけど、あなたなかなかいい筋肉の付き方してそうね……」
「え? あの、その……」
リチャードが驚いて体を引く。
「逃げなくてもいいじゃない」
「いや……困ります。すみませんが、あんまり触らないで頂けますか?」
リチャードが困り果てて、どうしようかと思った瞬間、助け船の声がした。
「ちょっと、マイラ、僕の大事なお客さんに手出さないでよ」
ピンクの髪の彼女の後ろに、レイがいつの間にか立っていた。
「レイ、こちらのハンサムさん紹介してよ」
「ごめんね、リチャード。彼女は彫刻家のマイラ・ヒギンズ。今日のパーティの主役なんだ。彼女はとっても素晴らしい作品を作るんだよ。マイラ、彼はMETのリチャード・ジョーンズ警部補。あんまり彼を困らせないで。こういう場には慣れてないから」
「そうみたいね。困らせちゃってごめんなさい。でも本当にあなた素敵な体つきしてるわ。ぜひ私の作品のモデルになって貰いたいんだけど……」
そう言ってマイラはリチャードの肩から腕にかけて、筋肉の付き具合を確かめるように、手を滑らせる。
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