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第13話
「シャワー浴びたら、この香りじゃなくなる。このままでいい」
そう言ってリチャードはレイをベッドに押し倒す。
「……せっかちだね。夜は長いのに」
「5年も待たせたから……俺も流石にせっかちにもなるよ」
リチャードは焦りを隠そうともせずに、荒々しくレイの服を脱がせると、自分もスーツを乱暴に床に脱ぎ捨てる。
「……皺にならない?」
「気にするな。レイと違って高級スーツじゃないから、別に皺になっても構わない」
「でも一応サヴィル・ロウで買ってるんでしょ?」
「……何で知ってるんだ?」
レイの言葉を聞いたリチャードは驚いた顔をする。
「セーラに聞いた」
「どうして?!」
「同じ店で僕もスーツ作ろうかと思ったから」
「……ストーカー?」
「失礼だな。いつもリチャードが着てるスーツ、すごく仕立てがいいから、僕も欲しいって思っただけだよ」
そう言ってレイは少しむくれる。リチャードは小さく笑ってそれに答えた。そしてじっとレイを見つめたまま、しばらく動きを止める。
「何?」
「いや……レイにも付くもの付いてるんだな、と思って」
リチャードの言葉に、レイはハッとした顔をして、顔を背ける。
「……やっぱり男は抱けない?」
「ち、違うって。そうじゃなくて、レイってどこか、その、アンドロジナス的なところがあるから、つい気になっただけで……俺、もうすっかりその気なんだけど……」
そう言いつつリチャードは手を伸ばして、レイ自身にそっと触れた。
「ん……っ」
びくん、と体を震わせて、レイはきつく目を閉じた。
「リ、リチャード……」
リチャードは優しい手つきで、ゆっくりとレイのペニスを扱いてやる。レイは小さく喘ぎながら、リチャードの体にぎゅっとしがみついて来た。その様子が可愛らしくて、ついリチャードは意地悪な気持ちになる。
「……レイ、今までずっと俺の事考えながら一人でしてたの?」
「な、何でそんな意地悪な事言うの?」
レイはそう言いながら、リチャードの顔を真っ直ぐに見つめる。その双眸から涙が溢れ出していた。
「……レイ?」
「……好きな人の事考えながら一人でしてたらいけない?」
「いや、そういう事じゃ……」
「はぁ……っ……」
レイはぽろぽろと涙を流しながら喘ぐと、リチャードの手の中に白い液体を吐き出す。
「ごめん、レイ。そんなつもりじゃなかったんだ。お願いだから泣かないで」
はあはあ、と体を震わせて息をしながら、レイは目を瞑ってぐったりとしていた。その頬に伝う涙をリチャードはキスで拭い取る。レイはそっと静かに瞼を開くと、右手を伸ばしてリチャードの頬に触れた。
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