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第15話

「……ごめん、俺もういく」 リチャードはそう言うと彼の中で果てた。その瞬間レイもシーツの上に白い花びらを散らせて、がくりと力なくベッドの上に崩れ落ちる。その彼の上に重なるようにリチャードも体を載せた。 「……リチャード、重い」 「ごめん」  リチャードは体を横にずらす。 「……あのさ、初めてじゃないって言ってたよね」  リチャードは疑問に思っていた事を口にする。 「……そうだけど」  それにしては、レイの体は男性を受け入れるには全然慣れていなかった。むしろ、初めてなのではないか、とリチャードが思うぐらいの反応だった。  俯せのままじっとしていたレイが、ゆっくりと顔だけリチャードの方へ向けた。栗色のふんわりとした髪の毛の間から覗く榛色の瞳が、リチャードの蒼い瞳を捉える。レイはその視線で、何かを訴えようとしているようにリチャードには思えた。  そしてレイは、自分自身に言い聞かせるように、一言一言噛みしめながら言った。 「……一度だけだったんだ。……あの一度だけ……」 「レイ……じゃあ」 「今夜が二度目」  リチャードは俯せのままのレイの両肩を抱き締める。栗色の緩くカールした髪が顔を覆っていて表情がよく見えない。彼は肩を抱かれたまま、身じろぎもせずじっとしていた。 「好きだよ、レイ。好きだ……きみだけだから」 ――ずっと、ずっとこの夜の事を忘れないでいてくれ。  レイの耳元でリチャードが子守歌を唄うようにそう呟いているうちに、すうすうと彼の穏やかな寝息が聞こえてきた。レイはすっかり安心しきった様子で寝入っている。安らかな表情を見ていたリチャードは、どうしようもなくレイを愛おしく感じて、そっと彼の俯せの背中に口づけする。それはまるで、騎士が姫君への永遠の服従を誓う証のような恭しい行為だった。 ――レイ……  リチャードは薄ぼんやりとした明りの中で、隣に眠る恋人の姿をいつまでも見続けていた。

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