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第16話
――ああ、鎧戸を閉めるのを忘れていたのか。
眩しい朝の光が、燦々と部屋の中に入り込んでいる。リチャードは腕を伸ばして、ベッドサイドテーブルに置いた自分の腕時計を取り上げると、時間を確認する。
――まだ、6時半だよ……
リチャードは両手で顔を覆って、溜息をつく。まだしばらく寝ていたい、と思いつつ、ふと気付いて自分の隣に目をやる。
――そうだった……昨晩はレイと……
レイは俯せの姿勢で、顔を腕の中に入れてまだ眠っていた。ブランケットから出た白い肩が、やけに艶めかしく感じる。
前夜、彼が自分の腕の中であられもない姿で乱れていた事を思い出して、リチャードは顔が火照るのを感じていた。
――まずいな……
過去に女性と何度もベッドを共にしてきたリチャードだったが、一夜明けて、こんな気持ちになったのは初めてだった。
「……リチャード、もう起きてるの?」
横を見るとレイが俯せのまま、顔だけをリチャードの方へ向けて、気怠い表情でじっと見ている。
「レイ、体は大丈夫か?」
「……痛いに決まってるだろ。突っ込まれたんだから」
「そ、そうだよな。あの、その……ごめん」
「謝らないでよ。そうして欲しい、って言ったのは僕なんだから」
リチャードはレイを抱き寄せる。
「それだけじゃない。……昨日の晩、レイの事泣かせただろう?」
「……ああ、あれ……」
レイはリチャードの顔をじっと見ながら、恥ずかしそうに微笑む。
「……リチャード、あれは違うんだ。そうじゃなくて……あれは、その、あんまりにも気持ち良くて……それで我慢出来なくて泣いちゃったんだ……」
「えっ?」
レイの白い顔にさっと朱が差す。そのまま照れを隠すように、リチャードの胸に顔を埋めてしまった。リチャードはそんなレイを可愛く思って、ぎゅっと抱き締める。
「……ねえ、リチャード……なんか当たってるんだけど……」
レイが突然冷静な声でそう言う。
「ご、ごめん、レイがそんな事言うから俺……勃っちゃったんだけど……」
「……悪いけど、僕もう体が辛いから何も出来ないよ」
「……分かってる。俺、平気だから……」
「リチャード」
レイが顔を上げる。榛色の瞳が悪戯な色を湛えてきらきらしている。
「僕の事考えて一人でしてよ」
――なっ……何だよ、やっぱり昨晩の事気にしてたんじゃないか……
「ふふ、黙ってないで何か言ったら?」
「……やっぱり昨日の夜、俺が言った事怒ってたんだ」
「全然怒ってないよ。……それとも、僕が口でしてあげようか?」
「レイ?!」
「……って思ったけど、今日は駄目。体がだるくてもう動けない」
レイはリチャードの腕の中からするりと抜け出すと、くるりと反転して向こう側を向いてしまう。
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